研究課題/領域番号 |
18K00831
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
寺西 雅子 (那須雅子) 岡山大学, 全学教育・学生支援機構, 准教授 (50311098)
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研究分担者 |
剱持 淑 岡山大学, 全学教育・学生支援機構, 教授 (20178164)
寺西 雅之 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (90321497)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ナラティブ研究 / 外国語学習 / 英語教育 / 質的研究 / オーラルヒストリー / ライフヒストリー / アジア人材 / TEM |
研究実績の概要 |
2019年度前半は、対象とするグローバル人材のインタビュー、および本研究の成果発表を実施し、一定の成果を上げることができた。また、時間軸を取り入れた分析フレームワークを用いて、昨年度に続き複数の学習モデル図を作成した。しかし、新型コロナウィルス感染症の影響を受け、3月に活動が制限されたため、予定していたインタビュー数件の実施を2020年度に延期し、成果発表についても状況を見ながら、開催時期を改めて検討することとなった。 研究実績としては、下記3点にまとめることができる。 (1)日本人1名と台湾人1名のインタビューを行った。 (2)集積したインタビューの分析状況として、複線径路等至性モデリング(Trajectory Equifinality Modeling : TEM)を応用したフレームワークを基に、学習モデル図を作成した。 (3)成果発表として、①日本国際教養学会英語教材プロジェクトチームのメンバーとともに、『大学生のための国際教養』 Intersection of Arts, Humanities and Science: Fifteen Selected Passages for University Students.を成美堂より出版した。その中で、アジアで活躍するビジネスマンのインタビューに基づき、グローバル人材に必要とされる「教養」について述べる英文テキストを掲載し、学生による自主的活動を促すFurther Studyを提供した。 ②口頭発表「日本人の語学習得に関する質的アプローチ:英語学習履歴のナラティブ分析と考察」を行った。③本科研の成果を掲載するホームページ開設をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、インタビューによる口述記録を扱うオーラルヒストリーの手法を用いて、外国語習得に成功した現役グローバル人材の履歴を集積し、それらを分析することによって、現代の日本人に有効な外国語学習法の特定を目指している。特に、グローバル人材に求めるべき語学水準は高度であり、「二者間および多数者間折衝・交渉レベル」といった上級レベルの語学力を備えた人材の確保が極めて重要であることが指摘されている。大学の外国語教育の枠組みの中で高い語学力を駆使して活躍する人材をどのように育成すべきかいう問いに対する答えを見出すことを目的としている。 「研究実績の概要」で述べた通り、2019年度前半は、対象者2名にインタビューを実施して詳細な履歴を聴き取り、データを記録できた。また集積したインタビューから抽出したデータについて、新しいフレームワークを用いた分析を行い、約10件の学習モデル図を作成できた。さらに成果発表についても、大学生向け教養科目のテキストを共著で作成し、学術論文1本を出版することができたことは、本研究の進展があったと考えられる。 しかしながら、2019年3月以降の新型コロナウイルス感染症の影響で、予定していたインタビューの実施がキャンセルとなり、また準備していた成果発表についても全国大会が中止されたため、延期せざるをえなかった。したがって、全体としては、当初の予定よりやや遅れが生じている、と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、まず2019年度に達成できなかった項目について実行したい。1点目として、2019年3月に予定していたインタビュー実施を行う。国内およびアジア地域でのインタビュー出張の再計画を模索したいと考えているが、新型コロナウィルス感染症の状況から慎重に判断したい。場合によっては、Zoom等を用いたオンライン上のインタビュー実施も視野にいれている。 2点目として、予定していた3件の成果発表について実現する機会を模索する。3月の日本国際教養学会全国大会にて、日本で活躍するグローバル人材を招聘し、一般公開の講演会を開催予定であったが、本企画を実現するための再検討を行う。また口頭発表1件「アジア地域で活躍するグローバル人材に行ったインタビューの分析と考察:文化的多様性に対応する英語運用能力について」とポスター発表1件を、さらなる考察を加え学会発表への応募を行う予定である。 なお、本年度は本科研の最終年度となるため、できる限り成果発表へ重点を置いて活動していく。すでに蓄積しているデータの分析・考察の精度を高め、口頭発表および論文発表を実施し、またそこからのフィードバックと合わせてまとめを行い、ホームページを中心として広く社会への発信を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、2019年3月に予定していたアジア地域を対象とするインタビュー出張を、中止せざるを得なかったためである。また同様に、講演会や口頭発表を行う予定であった第9回日本国際教養学会全国大会が中止になり、代表者と分担者の出張旅費が本年度未使用となったことが大きい。 2020年度においては、これら実行できなかった項目を繰り下げて実施し、未使用額をインタビュー出張および学会出張の旅費に充てる予定である。また最終年となる本年度は、成果発表に重点を置く予定であり、科研の成果発表のために開設したホームページの充実に向けて、データ整理を行う支援員の人件費、およびウェブサイト作成の支払いとして、本年度の未使用額の一部を使用する計画である。
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備考 |
Practical Applications of Narrative Studies: How Narratives Contribute to a Deeper Understanding of Modern Society
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