研究課題/領域番号 |
18K00833
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
西原 俊明 長崎大学, 言語教育研究センター, 教授 (70208205)
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研究分担者 |
西原 真弓 活水女子大学, 国際文化学部, 教授 (70249671)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 英語教育 / 英文創出 / イメージスキーマ理解 / 文法項目イメージ理解 / アプリケーション開発 |
研究実績の概要 |
令和元年(H31年度)は、前年度に引き続き高校検定教科書で用いられている動詞の意味、語法に関する情報を収集し、学習者が動詞の中核の意味を理解し、それが文法パターンと結びつくような配慮がしてあるかの分析を行った。与えられている説明が動詞の中核の意味理解に繋がっていない場合は、前年度に作成したEXCEL表にしたがい、中核イメージを書き込む作業を行った。また、時事的な問題を表現するのに必要な表現、特に動詞についてコロナウィルス感染症についての記事などから精選し、中核意味の記述を行う作業を追加した。例を挙げると、surge, soar, climb, jump, dropなどをイメージとしてとらえ、使い分けができるような記述を行なっている。これは、各種検定試験などで課せられるグラフの説明に用いる動詞に焦点をあてたもので英語による表現力をさらに強化するものである。語彙、及び文法項目に関する中核的イメージを理解することが英文理解に有益であることは、研究代表者のもとで修士論文を作成し、令和2年のJACET全国大会で発表する川添氏の研究からも支持される。川添氏の研究では、語彙、及び文法項目に関する中核的イメージを理解することが英文創出まで促進するかは明らかになっておらず、本研究で作成したアプリケーションでその有効性を検証することになる。 文創出アプリケーションは、様々な大きさの画面に対応するようなプログラムを組み込むことを行った。前年度作成したアプリケーションは、コアのイメージを文字による説明を見せて英文創出訓練の形をとるアプリケーションであったが、小学校、中学校の児童、及び生徒のことを考え、画像を一定の枠内にはめ込むアプリケーションに発展させている。今年度は、予定した備品の購入は行わず、現在保有している機器で発展したアプリケーションを作成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主な目的である語彙(特に、動詞)が持つイメージ理解を促進するアプリケーションの開発は、概ね順調に進展している。研究初年度(平成30年度)には、文字情報のみを組み込んでいたアプリケーションから音声情報を聞くことができるアプリケーションへと進展させた。文字情報のみによる英文創出訓練の後に、音声でターゲットとなる動詞が持つイメージを理解し、それの復習と定着を強化することを目的としたメニューを追加したアプリケーションである。さらに本年度(令和元年度)は、イメージ理解を視覚的に捉えることが可能となる画像(写真、及び絵)を組み込んだアプリケーションに進展させている。ターゲットとなる動詞が持つイメージが写真や絵によって提示され、その後イメージを反映させた英文が交互に提示されるタイプのアプリケーションになっている。このアプリケーションを用いることで、画像と英文が交互に提示され、無意識のうちに英文理解と英文創出を可能にする。イメージ理解を視覚的に捉えるタイプへとアプリケーションを発展させることは、計画書にもあるように、小学校でのアプリケーションの使用を目指すものである。アプリケーションの開発は段階的に進展しており、この意味において本研究は順調に進展していると思われる。しかしながら、コンテンツをアプリケーションに入れ込む部分で多少の遅れが見られる。本件で開発しているアプリケーションは、様々な大きさのパソコン、およびタブレット端末などの画面にも対応できることを想定している。また、新開発のアプリケーションに組み込む画像は、コピーライトに抵触しないような素材をインターネット上から探すか、あるいは自分で作成しないといけないため、実際にコンテンツを組み込んだアプリケーション数は、5つと限定的である。今後、コンテンツをはめ込む作業に多くの時間を割き、研究の目的を達成させる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
検定教科書において取り上げられている動詞に関して、例文と提示の仕方を分析してきた。まだ分析できていない動詞について調査分析を継続する。さらに、グローバル化時代における英語のコミュニケーションを見据え、時事的な内容を伝える動詞のうち教科書に用いられている動詞との関連でイメージが作りやすいものについてもコンテンツに加えていく予定である。コロナウィルス関連の数値を表す際に用いられたsurge、spikeなどが例として挙げられる。また、意味合いの強さの観点から、requestとurgeなどを同時に扱うコンテンツと必要な文法形式の提示をアプリケーションに反映させていく予定である。次年度は、画像によるイメージ形成と英文理解、創出が意図した通りに促進されるかを検証する実践を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、昨年度開発したアプリケーションを発展させること、及びすでに購入している検定教科書の分析を中心に研究を行った。アプリケーションの開発では一部で実験的に使用し、コンテンツの修正を行うことに時間を割いている。具体的には、文字情報のみを組み込んでいたアプリケーションから音声情報を聞くことができるアプリケーションへ発展させ、さらには、イメージ理解を視覚的に捉えることが可能となる画像(写真、及び絵)を組み込んだアプリケーションに進展させている。ターゲットとなる動詞が持つイメージが写真や絵によって提示され、その後イメージを反映させた英文が交互に提示されるタイプのアプリケーションに発展させた。この開発は、すでに保有している機器を用いることで開発を行っており、機器の購入費などの支出が抑えられているので予定と使用額に差が生じている。次年度は、アプリケーションコンテンツに画像をより多く取り込むため、画像処理を効率よく行える機器の購入を予定している。また、アプリケーションの完成度を高めるために専門家の指導を受ける計画をたてている。さらに、コンテンツの充実に合わせてアプリケーションの効果を検証し学会などでの発表を計画している。次年度に効果の検証が十分に行えない場合、翌年に発表を行う計画である。
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