研究課題/領域番号 |
18K00840
|
研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
成田 真澄 津田塾大学, 総合政策学部, 教授 (50383162)
|
研究分担者 |
野田 小枝子 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (60408474)
奥脇 奈津美 津田塾大学, 総合政策学部, 教授 (60363884)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 英語ライティング / 要約文評価 / 要約文作成指導 / 技能統合型ライティング |
研究実績の概要 |
本年度の最初の研究課題は、前年度に収集した英語要約文とその評点結果に対する言語的な分析を実施することであった。まず、要約作成の対象文章が有する言語的特性の違い(導入のパラグラフにおける主題文の書き方の違い)により、作成された要約の質(評点)に差異が生じるのかを調査した。分析の結果、文章全体の論旨を明瞭にまとめた主題文を有する文章の要約文のほうが質的に優れていることがわかった。英語文章における主題文の書き方の違いが英文読解の深さを左右し、要約の質(評点)に影響を及ぼしうると考察した。本研究結果を、2020年12月に開催の「関東甲信越英語教育学会第44回オンライン研究大会」で発表した。 2つ目の研究課題として、要約の評点に基づいて上位群と下位群に分け、要約の分析的評価に使用した各観点から、要約の質における差異をインタビュー調査から得られた情報を参照しながら分析した。評点の高い要約は、要約対象の文章から重要な情報を抽出した上でより包括的な要約にまとめるプロセスを経ていることがわかり、2021年9月に開催される国際学会での研究発表に投稿し、現在は査読の結果を待っている。 3つ目の研究課題である「要約作成の対象文章から借用している単語連鎖」では、英語表現として使用することに問題のない単語連鎖であっても、本研究で開発したツールから自動抽出されるため、剽窃につながる単語連鎖と区別して扱うべきであることがわかった。 さらに、より多くの英語要約文を収集するために、前年度と同様の実験環境を準備し、新たに15名の実験協力者を得ることができた。現在は、作成された英語要約文の評価を実施中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度の遅れの主な原因であった「英文要約作成実験環境の構築」については解消したが、2019年度末からの新型コロナウィルス感染症の増加により状況の終息が難しく、前年度から現在にいたるまでオンライン授業を継続せざるをえないという制約がある。オンライン授業のなかで英語ライティング指導(特に要約の作成に関わる指導)の改善を試みてはいるが、対面授業のようには個々の学生への対応がうまくできないでいる。 上記と同様の理由で、国内および海外での学会開催がほぼキャンセルになり、研究成果の発表と発表を通して他の研究者から得られるフィードバックの獲得が滞っている。2020年度に海外から英語ライティングの研究者を招聘して行う予定であったシンポジウムも開催できないでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度がオンライン授業での英語ライティング指導の2年目にあたるため、前年度の反省点を踏まえ、より効果的に英語要約文の作成指導が行えるように計画し、遂行する予定である。 英語ライティング授業の受講生が1年間変わらないことを利点として捉え、1年間における英語ライティング能力の変化を個人レベルでも調査することを研究計画に組み入れる。 要約文の言語的分析における課題のひとつである「要約作成の対象文章から借用している単語連鎖」に関しても、剽窃につながる単語連鎖とそうではない単語連鎖を区別する基準を検討するとともに、前者の単語連鎖の頻度と要約の質(評点)との関係性に着目して調査を進める予定である。さらに、その結果を英語要約文の作成指導において活かすことを試みる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の流行により、国内外の研究集会がキャンセルとなり研究発表のための出張ができなくなり、さらに2020年度に海外から研究者を招聘して開催予定であった国際シンポジウムをキャンセルせざるをえなくなったために使用しなかった助成金を本年度(最終年度)の研究に充当する。2020年度に開催予定であった国際シンポジウムを、オンラインで開催する可能性を検討し、開催のための環境構築を整えながら実施につなげていきたい。 本研究の初年度から継続している研究課題(英語要約文の言語的分析と評価)にさらに取り組みながら、英文要約の作成指導をオンライン環境のもとでも工夫して取り入れ、1年間という比較的長期間にわたる英語ライティング能力の変化を探る調査(要約文の質的評価とインタビュー調査)に注力する。
|