研究実績の概要 |
第二言語の読みにおいて、単語認知などの下位スキルを発達させることの重要性がこれまでの研究により明らかになり、多読に代表される読みの流暢さを育成する教授法が教育実践の場に導入され、普及しつつある (Day, 2015; Nakanishi, 2015)。一方で、第二言語の読み教育において、多読を通してどのようにして読み手の読み能力の向上が促され、自力で自らの読み能力を発達させていくことの出来る、いわゆる自立した読み手(independent reader)に育っていくのかというプロセスを明らにした研究はほとんど見られない。易しいテキストを読み続けることでテキストの情報処理能力は高まるが、読み能力の向上には文字や単語認知の下位スキルだけでなく、理解を促進する認知ストラテジーや理解に支障をきたした場合のメタ認知ストラテジーの行使など、第二言語によるリーディング能力を育成する方法についてリサーチに根差した具体的な指針はまだ提示されていないように思われる。 また、従来の読み指導の中に、多読を位置づけ、それにより読み能力をどのように発達させるのかについての具体的に明らかにした研究も少ない。つまり、文章の意味を正確に読み取るためのintensive readingと多読に代表されるインプット重視の読書経験を積むバランスのとれたリーディング指導をどのように実現するのかという問いに答える研究もまだまだ少ないと思われる 多読の普及が進む一方で、多読に効果的に取り組めない学習者は少なくないという報告もある(Taguchi, 2017)。Xreadingなど優れた商用多読教材もある中、研究代表者によるRRのオンラインプログラム(Web R2)を上記のような研究課題をあきらかにするために活用して行きたい。
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