「日中対照比較」の観点から、中国語・日本語の母語話者に対して行った作文調査(絵本を見て、物語を作る)のデータを用いて「発話のための思考」の先行研究を再論考した。その結果、中国語は「場面外視点」から「自己投入」し、日本語は「場面内視点」から「共感体験」を通して事態把握をする傾向があること、さらに、中国語母語話者は、言語情報に連続性を持たせた文を産出するため、絵本に書かれていない場面(情報)を前後の絵から推論・捕捉、それらを明示的に言語化していく傾向があるのに対し、日本語母語話者はより多くの「時間的な繋がり」の要素を取り入れることで、言語情報の連続性を確立する傾向にあることを明らかにした。
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