研究実績の概要 |
今年度は最終年度の研究として滞りなく進行した。前年度までに終えていた旧高校検定教科書コミュ英Ⅰ等の教科書テクストと付属テクストに現れるジャンルの調査から,教科書掲載のテクストにはジャンルがほとんど示されないことが判明していた。これを受けて,ジャンル準拠指導と評価を行うためのパフォーマンス課題を開発するにあたり,中学校検定教科書にも調査対象をひろげた。そこで,多くの中学校で採用されるNH, HW, NCの9冊で同様の調査を行ったところ,読むことと書くことの両紙面で,テクストフォーマット,テクストの活動領域,役割関係,伝達様式は,紙面冒頭の説明や指示文(リード文)と紙面のレイアウトで明示されていることが多いとわかった。一方,同紙面では,ジャンル(テクストの社会的目的)が明示さることが少ないことも判明していた。後者は高校教科書と同様の結果であったが,前者については中学校教科書の方がジャンルに関する知識がより明示され,これを用いてジャンルを指導するための課題を開発することが可能であることが分かった。そこで中学校検定教科書に示されたジャンルに関する情報とオーストラリアの学校国語(英語)教育でジャンルを指導する際に用いられるジャンルに関する情報,香港やシンガポールの学習指導要領等にあたる公的文書などで示されるジャンルの名称や分類など参考にして,ジャンルの知識として7項目に整理した。さらに,教科書テクストにジャンルの知識が明示されない場合には,当該テクストについてジャンルの知識に関する発問や課題を教師が行うことで,ジャンルを指導することができると提案した。その際,テクストの活動領域,役割関係,伝達様式,テクストフォーマット,それに言語的特徴を問う発問や課題を「ジャンル知識問題」,テクストの構成を示すステージとフェーズを可視化しする課題を「ジャンル正対課題」と呼び,提案することができた。
|