研究課題
オンライン授業においては、教授者が同一空間にいない状況の下でいかに学習者の緊張感を持続させるかが課題である。本研究では、オンライン学習中の学習者の緊張感を創出する要素として人間の存在感に着目し、「1. 他者の存在感が課題遂行に影響を与える可能性がある」、「2. 学習者の社会的性格特性が他者の存在感の効果に影響を与える可能性がある」という仮説の下、令和4年から令和5年にかけて、広島経済大学の学生40名に対して行動実験を行った。課題は足し算と引き算から成る計算で、「課題遂行中のパソコン画面の一部に教師の顔がリアルタイムで出ている場面」(以下、「顔あり」と表記)と、「課題遂行中のパソコン画面に教師の顔が出ていない場面」とで、計算課題の正答率などに違いがあるかどうかを検証した。この課題の遂行には、実験協力者の学生たちが日常的に使用している学習支援システム「Edutrack」を使用した。学生の社会的性格特性の測定には、対人反応性指標(Interpersonal Reactivity Index)を用いた。また、脳内のワーキングメモリ(作業記憶)を測るためのリーディングスパンテストも併せて実施した。分析の結果、①リーディングスパンテストの得点が高い学生、および、②社会的性格特性のうち「想像性(Fantasy Scale)」と「個人的苦痛(Personal Distress)」が高い学生について、学習における「顔あり」つまり「他者の存在」の影響が効果的に出現した。これらの結果は、学習者の社会的性格特性がeラーニングにおける学習効果に関与すること、また、リーディングスパンテストによって測定されるワーキングメモリも学習効果に関与することを示唆している。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うちオープンアクセス 3件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
広島経済大学研究論集
巻: 第46巻第3号 ページ: 1-10
10.18996/kenkyu2024460301
Frontiers in Human Neuroscience
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Issues in Japanese Psycholinguistics from Comparative Perspectives, Volume 2: Interaction Between Linguistic and Nonlinguistic Factors
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