研究課題/領域番号 |
18K00865
|
研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
野地 美幸 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (40251863)
|
研究分担者 |
中島 基樹 長野県立大学, グローバルマネジメント学部, 准教授 (60609098)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | L1日本語の英語学習者 / tough構文 / 演算子移動 / 機能範疇C / 多重否定文 / 機能範疇Neg |
研究実績の概要 |
2021年から継続して行ってきた、母語が日本語の学習者による英語のtough構文の習得に関する研究は、日本言語学会の学会誌『言語研究』に投稿していた論文が2023年9月に採択された。そして2024年1月『言語研究』165号に論文「L1日本語の英語学習者によるtough構文の産出におけるインプットと母語の影響」が掲載され、その成果を公表することができた。英語のtough構文は補文内で(音形を持たない)空の演算子の移動が生じることにより形成されるが、この研究の成果として、L1日本語の学習者のL2英語文法では演算子移動が生じていない可能性があり、演算子移動の引き金となる機能範疇Cの特性が目標言語とは異なっていることを示唆したことになる。 また、2022年度に着手した、日本語を母語とする英語学習者の機能範疇Negに関する文法知識を明らかにするための研究についても継続して行った。L2の先行研究においてこれまで取り上げられることの少ない多重否定(複数の否定表現を含む文)について、まずは標準英語の文法(否定と否定が打ち消しあって肯定の意味)と、非標準とされる英語やフランス語等の言語における文法(複数の否定語を用いて否定の意味)に違いがあることを確認した。続いて、一般的な学習者向け英語参考書における用例の調査を行った結果、「二重否定」として掲載されている例のほとんどが接辞否定を含むもの(e.g. It is not impossible)に限られており、He didn't say nothing.のような否定語を複数用いた例はほとんど見られなかった。したがって、L2学習者は英語における多重否定の解釈について、十分なインプットが得られていないものと考えられる。今後、L2学習者が英語の多重否定の文をどのように解釈するかを実験によって調査することで、L2における機能範疇Negの習得過程を明らかにすることを目指す。
|