研究実績の概要 |
今年度は2つの研究を中心に行った。 第1に,これまでオノマトペについては,音韻的な構造と意味との間に体系的な関係がないと考えられがちであった。そこで,オノマトペの音韻構造と意味との体系的な関係を検討するために,2モーラからなるオノマトペを使って検証した。具体的には,(1)第1モーラの語頭有声性,(2)「ピック」など語頭/p/の有無,(3)「ブラリ」などの語中/r/の有無,(4)「キリリ」などの母音一致,(5)接尾辞タイプ(撥音のN,促音のQ)を持つかどうか,の5つの特徴と意味との関係を検討した。588種類のオノマトペをデータとして,5つの特徴から,動き,視覚的パターン,他の感覚,心情・認知の階層を予測する分類木分析を行った。分析の結果,オノマトペの類像性を振り分ける要因として,語頭有声性と語中/r/が特に強く働いていることが判明した。語頭有声性は類像性階層の上位部分を,語中/r/は下位部分を支える体系的特徴があることが示された。 第2に,中国人日本語学習者による動作の一時性および重複性を示すオノマトペの理解について検討した。日本語を学んでいる中国人学習者83名に対して,日本語の語彙テストとオノマトペの理解テストを実施した。オノマトペは,動作を一時的に示すものと重複した動きがあるものの2種類を検討した。一時的な動作については,「急に」「突然」などの時間名詞を理解して,そこから一時性のオノマトペを選択しなくてはならない。重複性のオノマトペは,「流れて止まらない」とか連続する動詞から推測する必要がある。分析の結果,重複性のほうが一時性のオノマトペよりも成績が良かった。また,語彙のなかでは,形容詞の理解が両方のオノマトペの理解を促進していた。さらに,正答かどうかを予測する回帰木分析の結果,オノマトペの種類が最も強く影響し,次に,同時の自他性・サ変動詞,語彙能力が影響した。
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