外国語の習得には、指導方法・指導者・学習環境等の要因だけでなく、学習者の母語、性格、動機づけ、性別、知的能力など様々な学習者要因がからみ合ってその習得に影響を与えている。そうした様々な学習者要因の中でも、適性要因については、まだ研究は少なく、その結果についても様々である。そこで、本研究は、適性要因のひとつである、作業記憶に焦点を絞ってその外国語習得に与える影響を明らかにすることを目的に実施した。 具体的には、外国語(英語)の各種技能(①リスニング、②スピーキング、③リーディング、④ライティング、⑤語彙)に、異なるタイプの作業記憶力(①言語的音韻記憶、②非言語的音韻記憶、③視覚的記憶)がどの程度影響を与えているかを明らかにするための実験調査を行った。まず、各種能力を測定するためのテスト(記憶については5種類、英語技能については5種類の計10種類)を開発した。本実験実施前に、パイロット実験を実施し、開発したテストの妥当性および実験手法に問題がないかを確認した後に、本実験として日本人英語学習者163名に対して実験を実施した。研究の最終年度である本年度は、収集したデータの分析に注力した。特に外国語のパフォーマンステストの評価については、外国語指導経験のある3名の英語母語話者に協力してもらい、データの分析を行った。3種の記憶力及び、外国語の能力テストのスコアを分析した結果、各種の記憶力が外国語の能力の個人差を説明する有意な要因となっていることが示された。現在の第二言語習得研究において、その習得の方法や効率は、学習者によって様々であり、より効果的な言語指導を行うためには、その学習者に応じた指導を行うことが重要であると考えられており、今回の研究結果は、外国語習得における学習者の特性の理解に貢献するものとなった。
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