研究課題/領域番号 |
18K00871
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
長崎 睦子 愛媛大学, 教育・学生支援機構, 准教授 (90406546)
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研究分担者 |
折本 素 愛媛大学, 教育・学生支援機構, 教授 (20194649)
ARMITAGE KRISTIN 愛媛大学, 教育・学生支援機構, 助教 (70765809)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ペア・リハーサル / 個人リハーサル / コミュニケーション能力 / 会話ルーブリック |
研究実績の概要 |
本研究は,グローバル社会で活躍できる大学生の育成を目標に,その基盤のひとつとなる英語コミュニケーション基礎力を確実に身につけさせる指導法とその効果を測定する評価法を確立することを目指す。その実現のために,3つのプロジェクトの実施を目的としている。 (1)授業(ダイアローグ(対話)の発表)と授業外学習(個人&ペアでのリハーサル)を有機的に結び付けた英語コミュニケーション能力を育成する学習指導方法の実践と改善,(2)英語コミュニケーション能力を評価するための独自のスピーキング・ルーブリックの作成と改善:より妥当性・信頼性の高い評価法の確立,(3)英語習熟度の高いクラスでの発展的取り組みの実践:ディスカッション能力の育成 本研究では,ペアで行うインタラクティブ・リハーサルの英語コミュニケーション能力への効果を調査するが,その実行可能性を検証するため,予備研究として,平成29年度に国立大学1年生の必修英語科目5クラス(150名)にて,本プロジェクトの一部を実施した。学生は,授業でのダイアローグの発表に向けて,自宅で携帯電話を使って,ペアの学生とリハーサルに取り組んだ。アンケートでは 80%の学生が,携帯電話でのインタラクティブ・リハーサルは楽しいと答え,87%の学生が,このリハーサルは自分の英語コミュニケーション力を高めると思うと回答しており,ペアでのインタラクティブ・リハーサルを取り入れた学習は通常クラスで十分に実施可能であると考えられる。会話タスクを用いた事前・事後テストも実施し,(仮)ルーブリックを基に本研究者ら3名で評価を行い,ルーブリック及び評価法の改善も行った。この結果については、平成30年度に国際学会(第54回RELC,シンガポール)にて発表した。 平成30年度に実施した研究については,「現在までの進捗状況」にて詳しく報告する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究1年目(平成30年度)は,国立大学1年生の必修英語科目2クラスに,個人およびペアで行うリハーサル法を取り入れ,英語コミュニケーション力の向上にどのような効果をもたらすかを検証した。リハーサル強制グループとリハーサル自由グループに割りあて,口頭リハーサルは,(1)第二言語(英語)へのどのような気づきを促すか,(2)英語コミュニケーション能力を高めるか,を検証した。両クラスの学習者は,自宅では授業でのダイアローグ発表に向け,原稿を書かずに,会話する内容について(1)5回以上,個人で英語による口頭リハーサルを行い,さらに(2)2回以上,ペアでインタラクティブ・リハーサルを行う。ペアでのリハーサルは対面で行っても良いし,SNSの無料通信機能などを利用し携帯電話で会話をしても良いこととした。共通のログ(記録用紙)を配布し,個人,ペアでのリハーサル直後に,気づいた点について自由に記入してもらった。本研究用に,6観点,5尺度からなるルーブリックを作成し,それに基づきペアで行う会話の事前・事後テストの評価を行った。 分析の結果,個人・ペアリハーサル共に,リハーサル回数が増えるほど,テストの点数が伸びることが分かった。具体的には,個人リハーサルは,ルーブリック観点の「考えや意見を述べる能力」(Expressing thoughts and opinions)と「語彙力」(Vocabulary) の向上に効果があること,また,ペア・リハーサルは「会話を挨拶で始め閉じる能力」 (Greetings & Closings) と 「会話への態度」(Attitudes)の向上に効果があることが明らかになった。本研究の成果発表は,本年度(令和元年)8月に,第58回JACET国際大会にて口頭発表をし,その後論文としても発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度 (平成31年/令和元年)は,まず第一に,昨年度の研究結果を詳細に分析し,ルーブリックなどの評価方法の改善に取り組む。第二に,個人およびペアでのリハーサル法を2年次以降の英語習熟度の高い学生を対象にしたディスカッション・クラスで発展的に実践し,社会的諸問題について議論できる,グローバル社会で求められるコミュニケーション能力の育成を目指す。ディスカッション能力を測定するためのルーブリックの開発も行う。 来年度(令和2年)は研究最終年となるが,予備研究も含めた3年間の実証研究成果をまとめ,普遍性の高い指導法へと発展させる。結果については,学会や論文で発表するだけでなく,ワークショップ(一般公開)を積極的に行うなど,広く成果を発表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が184,220円となったが,これには主に2つの理由がある。一つは,ビデオカメラを購入する予定にしていたが,データ収集の日程調整が上手くいったため,同時に使用するカメラの台数が減り,手持ちのカメラのみで対処することができたためである。二つ目は,ICレコーダーの購入数が少なくて済んだことである。データ収集に必要な参加学生数が当初予定していたより少なかったため,手持ちのレコーダー数で,必要台数をまかなうことができたためである。 交付決定された翌年度分の直接経費(700,000円)と合わせると,884,220円となる。成果発表のための国内外出張旅費に約600,000円,ICレコーダーなどの物品費や英文校正費などその他に約284,220円を使用する予定である。
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