研究課題/領域番号 |
18K00873
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研究機関 | 前橋工科大学 |
研究代表者 |
原島 秀人 前橋工科大学, 工学部, 教授 (30238175)
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研究分担者 |
ローソン トム 長崎国際大学, 人間社会学部, 准教授 (40645157)
淺田 義和 自治医科大学, 医学部, 講師 (10582588)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ラーニングアナリティックス / 学習分析 / Moodle / 学習データ |
研究実績の概要 |
ラーニング・アナリティックス(学習分析)の研究は日本でも次第に注目が集まる様になり、学習分析学会や他学会の学習分析部会などが発足し始めている。我々もそれらの団体への加入や交流を通してラーニング・アナリティックスの理解や普及に努めてきた。本年度の我々の研究は、プロセスフローに沿った学習情報源からのデータの抽出、データの可視化、その分析、という一連の流れを作ることを主眼とした。まず学習情報源としてはL M Sに絞り、Moodleを使用した。Moodle内の学習履歴はデータベース上に存在する。これに関して、Configurable Reportsというプラグインを使い、その生データをS Q Lで吐き出すことが可能である。さらに、そのデータを可視化し、加工・解析することで、特に注目するゾーンにターゲットを定めたうえで、その部分を指標で測定するという操作を試みた。Moodleが3.8になり、以前の様な決まったモデルを採用するのではなく、独自の学習分析モデルを作ることが可能になった。これにより、全体的なデータ分析からフォーカスを絞った分析ができる様になった。これらの成果については学習分析学会や計測自動制御学会で発表した。またMoodle自体もバージョン3.8から様々な学習分析ツールがReportsとしてまとめられ、機能強化が図られたので、それらを教育の中で試行した。特にInspire として開発されたツールはInsightとなり、トレーニングを前提としなくともある程度学生の進捗を予測できる様になったが、更なる予測精度の向上に向けて調整が必要であることが分かった。これらについてはMoodle LA Working Groupで情報を交換しつつ、ここまでの研究をMAJ オンラインムート2020やHawaii TESOL Conference2020 で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究に参画する3人の研究者が熊本に集まり、検討会を行なった。その中で、Moodleを使用する他の教育者がどの様な学習データを求めているのかを調査する必要があるということになり、MAJ オンラインムート2020においてラウンドテーブルを開き、意見を聴取した。聞かれた意見としては、あまり学生の学習データを見たくない、見られたくない、という教師が居ること、学生が自らの弱点が分かる様にルーブリックの細かい評価点がダウンロード出来るようなものが欲しい、学生が自分の進捗やクラス内の順位などを自ら確認できる様なものが欲しい、現在や過去のデータよりも未来を予測する様な分析データが欲しい、などの意見が聞かれた。これらの意見に対応するラーニングアナリティクスの方向づけや可能性について検討に入ったところである。そんな中、2020年に入り、新型コロナウィルスの感染が広まり、参加を予定していた学会や研究会などが軒並み中止に追い込まれた関係で、議論や発表の機会が失われた面は研究が滞ったと言えるが、一方、オンライン学習の機会が増えたということはそれだけデータが集まり易くなったとも言えるので、全体として研究の進捗にそれ程大きな影響は出ていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方針としては、現在コロナ対策として行われているオンライン教育・学習で生成される学習データを様々な切り口から分析することを計画している。一つにはオープンソースのアクセス解析ツールであるMatomoをMoodleのプラグインとしてインストールしたので、これを使った学習者アクセス分析などを試みる。また今回、Moodleとタイアップさせて同じくオープンソースのBigBlueButtonというビデオ・コンファレンシング・システムを試行している。全国の10大学が参加し、ロードバランサーでアクセス負荷を軽減しながらビデオストリーミングサーバーのクラスターを形成するものである。様々な試行錯誤、問題解決が進行中で、ここから出てくる様々なデータも分析の対象とする計画である。また、集まったデータを元に、その裏に潜む学習行動についての仮説を練り、外国語学習のDescriptive (記述的)なアナリティックスからPredictive (予測的)、Diagnostic (診断的)、そしてPrescriptive (処方的)アナリティクスへのモデル作りを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの蔓延により、計画していた学会や研究会の中止が相次ぎ、旅費の残額が生じた。次年度は状況の好転が見込まれるので、旅費に充当する計画である。
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