研究課題/領域番号 |
18K00890
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研究機関 | 東洋英和女学院大学 |
研究代表者 |
笹島 茂 東洋英和女学院大学, 国際社会学部, 教授 (80301464)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多言語多文化 / 教師教育 / 教師認知 / CLIL / 言語教育 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、すでに各地で進行している多言語多文化状況の実態の特徴を典型的な地域を選別し調査し、その調査を基盤に多言語多文化状況に対応する言語教育のあり方の問題点を明らかにし、従来の教科科目ごとに分かれているカリキュラムの再編成とともに、国語教育と外国語教育の統合を意図した言語教育の枠組の再構築を検討し、その学習に従事できる多様な知識と技能を持った(言語)教師を育成する意義と可能性について実践的に事例を積み重ね、多言語多文化状況に対応する多機能(複数言語と複数文化を扱う)教師の教員養成と研修の枠組を提案することにある。その点を踏まえて、本研究の1年目では、従来の小中高などの学校段階や英語や社会など教科という狭い専門的な分野を設定することなく、必要な状況に柔軟に対応可能な教育システムに合わせた教師の養成と研修の仕組みに関する基礎的な調査を実践的に行った。本研究では具体的に、多言語多文化社会における言語と文化をめぐり、1)教師認知の探求、2)教育と言語の関係、3)教師教育と言語の役割、に焦点を当てて探求することとしており、1)教師の言語や文化に対する認知の観点、2)教育と言語の関係を英語と母語の関係、3)教師教育における英語と他言語との関係を、日本との比較から各地で調査し、データを収集中である。調査対象の地域は可能な限り多く、多岐にわたるようにした。具体的には、英国、豪州、中国、シンガポール、ボスニアヘルツェゴビナ、フィンランド、ノルウェイなどで、現地の学校などに訪問し、教師にインタビューしながら、実践的に役立つデータの収集を心がけた。現在は、調査研究4年間の1年目であり、準備の段階であるので、具体的な成果はないが、ほぼ満足できる成果は得られたと考える。2年目も同様にデータ収集に集中するが、研究の手法として、途中経過を学会などで発表しながら、さらにデータを収集する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した通りには進行していないが、多少変更しながらも、目的に向かっては順調に成果をあげている。特に、本研究がCLILという教育と深く連動することに一因がある。間接的であるが、CLIL教育がかなり関心を持たれてきて、教師の役割が、単に英語を教えればよいという考え方から、内容をともなった学習へと推移している傾向が本研究を間接的に支えている。1年目の調査ではCLIL教育に特に重きを置いて調査はしていないが、概ね本研究の目標とする多言語多文化に対応する多機能教師教育が、ほぼCLIL教員の養成を基本に置くことで可能になるいくつかの根拠となるデータを収集できた。2年目は、その点を踏まえて、1年目の調査データをもとに、日本でCLILを実践している教師、英語教師、日本語教師にも多言語多文化の意識調査をさらに実施し、方向性の確認をする。それと同時に、小中高大における実験的な授業の取り組みを予定する。CLIL授業、英語授業、日本語授業など多様な授業を観察し、また、授業を依頼しながら、授業でどのように多言語多文化を扱っているか教師の実践とインタビューをもとに分析し、可能性を探るとともに、多機能教師の要件の基盤を形成する。これらの調査結果を統合的に組み立てて、多言語多文化状況に対応する多機能教師の教員養成と研修の第1次プランの基礎を構築する予定である。2年目は、1年目の実践を土台にこのような計画を立てられている点から、概ね順調に研究は推移していると判断している。ただし、本来の意図した多機能(複数言語と複数文化を扱う)教師の教員養成と研修とは異なる形になる可能性が出てきている面も否めない。その点から当初の計画と実際の研究が少し乖離しているかもしれないが、研究の手法が探索的な内容であるので、今後どのように推移するかは明確には判断できない。その点から概ね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
「現在の進捗状況」にも記した通り、多言語多文化を背景とした学習の検討を2年目は1年目の調査をもとに実施する。1年目の意識調査と多言語多文化教育の実験学習のデータをもとに、2年目はその点を踏まえて、1年目の調査データをもとに、日本でCLILを実践している教師、英語教師、日本語教師にも多言語多文化の意識調査をさらに実施し、方向性の確認をする。それと同時に、小中高大における実験的な授業の取り組みを予定する。CLIL授業、英語授業、日本語授業など多様な授業を観察し、また、授業を依頼しながら、授業でどのように多言語多文化を扱っているか教師の実践とインタビューをもとに分析し、可能性を探るとともに、多機能教師の要件の基盤を形成する。これらの調査結果を統合的に組み立てて、多言語多文化状況に対応する多機能教師の教員養成と研修の第1次プランの基礎を構築するが、海外での調査と発表を継続して実施する必要があり、経費の多くは旅費に費やされる予定である。特に大幅な研究の変更はなく、今後も実施した調査をもとに教師や生徒のデータを参照し、また、収集した事例をもとに多言語多文化状況に対応する多機能教師の意義や課題を検証する。それと同時に、従来の教科科目に分類されたカリキュラムの再編成とともに、国語教育と外国語教育の統合を意図した言語教育の枠組の構築を検討し、CLIL教員養成や研修を参考に多言語多文化状況に対応する授業とそれに対応する多機能教師の要件を検討する。3年目も同様に海外での調査研究が主であり、また、学会発表も予定している。最終的に研究成果は提言としてまとめる予定であるが、それとともに海外への発信も視野に学会誌などへの投稿も考えている。研究課題の性格上、研究打ち合わせ、学会発表のために旅費を支出することが多くなるので、他の経費はできる限り節約して研究を遂行する予定である。
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