本研究の目的は、1)すでに各地で進行している多言語多文化状況の実態の特徴を典型的な地域を選別し調査し、2)その調査を基盤に多言語多文化状況に対応する言語教育のあり方の問題点を明らかにし、従来の教科科目ごとに分かれているカリキュラムの再編成とともに、3)国語教育と外国語教育の統合を意図した言語教育の枠組の再構築を検討し、4)その学習に従事できる多様な知識と技能を持った(言語)教師を育成する意義と可能性について実践的に事例を積み重ね、5)多言語多文化状況に対応する多機能(複数言語と複数文化を扱う)教師の教員養成と研修の枠組を提案することにある。過去3年間に実施した多言語多文化社会における言語と文化をめぐる基礎的な調査、教師の言語や文化に対する認知の観点、英語と母語の関係、教師教育における英語と多言語との関係など上記の研究目的に関してほぼ達成し、多機能教師の養成と研修の枠組案の構想の検証を計画していたが、新型コロナ感染症の拡大により、海外での研究が全て中止となり、オンラインでの調査とアンケート調査を実施し、多機能教師の養成と研修の枠組案の構想の検証の一環として、広く意見を聞き、必要なデータを集め、分析した。予想される結果は、肯定的な傾向を示しているが、結局検証することはできなかった。理由は、2021年度はその最終年度にあたるが新型コロナ感染症の影響により、検証すべき、海外での調査がようやく2月と3月にやっとできた程度であり、まとめるには至らなかった。実績として言えることは、多機能教師教育の可能性はあるということである。その資質は、何らかの専門分野や科目の知識があり、CLILの知識と技能があり、文化間理解能力に長け、統合学習に関心があることと関連していることはうかがえた。海外調査でも同様にその点は示唆されたが、検証まではいかなかった。残念であるが、それを報告とすることで概要とする。
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