2021年度に引き続き、字幕翻訳でのパラフレーズに着目した。以下の2つのリサーチクエスチョン(RQ)を立てた:(a)文脈を意識した翻訳ができるのか?(b)制約のある字幕翻訳において、メッセージの復元を実現するために、学生はどのようなストラテジーを用いることができるのか。RQに基づく考察を進めるにあたり、授業での英日と日英の字幕翻訳のコースワークは以下の通りとした。文法的な翻訳に慣れた学生を異文化を介在した翻訳(語用論的な翻訳)に向かわせるために、3つの翻訳プロセスを段階的に導入するフォーマットを導入した。まず、学生にとって身近な文法訳を行った。次に、文脈や百科事典の知識、STの意図するところを考慮した語用論的な翻訳を行った。最後に、非常に厳しい字数制限の中で編集する字幕翻訳を導入した。各翻訳の終わりに、受講生が翻訳ファイルを講師に提出しました。講師は、提出された翻訳ファイルの中からランダムに1つを選び、匿名で公開添削を行った。その添削を受けて、学生は講師の評価項目と添削例に基づいて自分の翻訳を再翻訳した。最後に、学生に「何に気づき、どのように訳し直したか」を記述させることで、メタ言語使用を可視化させて言語使用に対して意識付けさせるようにした。RQ(a)に対しては、文法訳と語用論的翻訳という2つのレベルの翻訳を導入したところ、学生は徐々に文脈を考慮した異文化媒介翻訳を意識するようになったことが分かった。(b)については、字数制限のある字幕を編集することで、コミュニケーション機能や言葉の使い方を磨き、「省略」「言い換え」「格関係の変化」の3つのストラテジーを用いて居ることが分かった。この結果を、2022 ETA International Conference on English Language Teaching で発表し、研究論集(人間科学研究)25号にまとめた。
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