研究実績の概要 |
外国語学習を主たる目的としない短期海外プログラムの参加者318名の, プログラム参加前, 参加後の「外国語学習観」に関するデータを収集,分析した。その結果, 参加学生は渡航前において既に外国語学習への意欲や動機づけは高くなっており, 海外プログラム参加後には, さらに外国語学習を通して外国人とコミュニケーションをとりたいと思う気持ちが高まっていた。また, 参加後には今学習している外国語をいつかは上手に話せるようになるという自信も強まっていた。学習・コミュニケーション方略についても, 渡航経験を通して, 外国語学習における反復練習の必要性, および外国人との意思疎通における推測の重要性が高まっていた。さらには, 海外に出たことによって人前で外国語を話すことに関しての抵抗も低くなっていた。このように, プログラムの主旨としては語学研修を主たる目的としていない短期の海外派遣プログラムにおいても, 参加者は「外国語学習観」に関するポジティブな影響を受けていることが分かった。加えて、海外留学が,日本人大学生の持つ外国語学習観にどのような影響を与え,そこに「性差」が見られるのか検証を試みた。まず事前の外国語学習観34項目に関しては,男子は,外国語の習得は誰にでも可能で,また一定の時間をかければ習得できると考える傾向が女子よりも強い。また言語の種別による習得の難易度に関しても,男女とも中程度付近であり,明確な認識を持っていないと考えられるが,比較するならば,女子より男子の方が,その認識がわずかに高くなっている。一方,「外国語で分からないことばがあると,意味を推測してもよい」という外国語学習の方略についての意識は女子の方がわずかながら高い。また,男女とも,外国語学習について特定の適性は存在しないと考えているものの,この傾向も女子の方が強いようである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、留学の効果の中でも、特に外国語習得を目的としていない活動型短期海外プログラムにおける参加者の「外国語学習観」と「外国語学習行動」の変化に着目する。 「外国語学習観」とは、学習行動を促進する要因として学習者が抱く信念、すなわち「どのように外 国語学習は起こり、またどうすれば学習は効果的に進むのか」という学習成立に関する確信(ビリー フ)を指す(Horwits 1987, 植木 2002)。「外国語学習行動」とは、実際の外国語学習のための行 動を指す。「外国語学習観」はモチベーションや「学習行動」に大きく影響し、ひいてはより高い語 学レベルの習得につながる(Gardener 1972, Dornyei 2001)という過去の研究に基づいている。現在は、収集したデータから「外国語学習観」に関して、項目別に留学前、留学後、半年後の比較を行った。また、予定はしていなかったが、それに関しての男女の性差の比較を行った。
|