研究実績の概要 |
語彙知識は読解力に不可欠であるが(Laufer, 1997)、多読は母語においてだけでなく、外国語学習においても偶発的な語彙習得につながると言われている(Krashen, 1989)。多読は一般的に非効率さが指摘されているが(Wesche & Paribakht, 1996)新しい語を覚えるというよりも、知っている語や覚えかけの語を記憶に定着させるのに向いていると言われている(Waring & Takaki, 2003)。多読は意図的な学習に比べ、目標語以外の語彙も習得している可能性があり、この点に焦点をあてた研究はこれまでほとんど見られない。以上のことから、グレーデッド・リーダーズを使った多読活動が、偶発的な語彙習得に与える影響を、活動前後の語彙サイズを測ることで検証した。参与者は非英語専攻の学生で、英語熟達度が高く、多読を行なわず、伝統的な訳読式授業を用いるグループ(A)と、(A)グループよりも英語熟達度は低いが、授業内外で多読を行い、アウトプットを重視する授業を行うグループの中で最終的に読んだ語数が5万語以上のグループ(B)と5万語以下のグループ(C)の3グループについて、指導の前後の4月と12月で、日本人学習者向けの語彙サイズテスト(Mizumoto, 2005)とアンケート調査を行い、多読の有無と読んだ語数によって偶発的語彙学習による語彙サイズの変化を比較した。テストの結果はSPSSを使用した共分散分析(ANCOVA)及び分散分析(ANOVA)を行った。結果は全てのグループが全体的語彙サイズは減少したが、1000語レベルでは(B)グループが有意な伸びを見せ、2000語レベルでは(C)グループが有意に語彙サイズを伸ばしたことから、高頻度語の定着における多読の有効性が示唆された。
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