研究課題/領域番号 |
18K00905
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡 美穂子 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 准教授 (30361653)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 日本人宣教者 / キリシタン / 仏教とキリシタン |
研究実績の概要 |
本年は論文と図書の執筆を中心に活動をおこなった。本研究の直接的な成果である論文「僧形の宣教者」(齋藤晃編『宣教と適応』名古屋大学出版会、2020年2月)では、元仏僧の日本人宣教者の役割の重要性が、先行研究ではヨーロッパ人宣教師を支える副次的なものであると見なされてきたことを反芻し、彼等こそが日本でのキリスト教宣教の主体であったことを強く主張した。本論文は、大きな社会的反響を呼び、毎日新聞の書評で収載書が取り上げられた際に、主な書評対象となった。また同様の趣旨の論文である”The Kirishitan as a Buddhism from the West”を執筆し、これは2021年度に刊行予定のCambridge History of Japanの第1巻に収載される。この論文の執筆において、適宜和英翻訳業者を利用したため、本研究費から翻訳費を支出した。上記2本の論文のほかに、「天正少年遣欧使節の光と影―キリシタン版と製作に関わった日本人―」(『東京大学大学院情報学環紀要』98号、2020年3月)を執筆し、日本のキリスト教宣教の中で、翻訳や出版事業に多大な貢献を遺した日本人の宣教者たちの役割を明らかにした。またこれらに関連する講演もおこなった。 図書としては、The Namban Tradeを執筆し、その際に、英文校閲、原稿の整理謝金等に本研究費を用いた。現在すでに脱稿し、海外出版社の元で査読の途にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
すでに本研究の成果として、論文を4本刊行した。また、海外の研究者に広く研究成果を知らしめるべく、英語論文を執筆した。掲載先は海外の日本史研究で最も権威ある媒体であるCambridge History of Japanであるという点でも、水準以上の成果を出していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在取り組んでいる、キリシタン時代の重要な信仰具であったと考えられる「ご聖体の連祷と黙想の図」(澤田美喜記念館所蔵)についての研究成果を新書等の一般書にまとめる予定である。同図ならびに付随する祈祷文の総合的な製作者(単独ではない可能性もある)が日本人宣教者「パウロ」であった点に着目し、日本のキリスト教布教の実態の解明に迫る。またこの成果とは別に、科研費全体の成果として、研究者・一般向けの選書執筆を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度中に執筆し終えた英語論文ならびに英語図書は、現在編者の元でレビューの途にあり、昨年中の経費として計上していた、レビュー後の最終原稿調整に必要な英文校閲費が使用されなかったため、2020年度に繰り越す必要があった。
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