研究課題/領域番号 |
18K00916
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
渡辺 愛子 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10345077)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イギリス文化外交 / 20世紀イギリス史 / 冷戦期 / ブリティッシュ・カウンシル |
研究実績の概要 |
本研究課題は、20世紀イギリスにおける政治的な文化の様相を理論と実証の両側面から考究するものである。
3年目の本年度は、新型コロナウィルスの感染拡大の煽りをまともに受け、冷戦期イギリス文化外交の文化投影と東側諸国における受容と応答に関する研究を進めることがほぼできなかった。当初は、最低でも一回、願わくば二回のイギリス出張によって一次史料を入手し、イギリスが海外(とくに冷戦期の東側陣営)へ投影した文化表象について解明する予定であったがかなわなかった。また、研究課題を進めるなかで浮上してきたイギリスとオーストリアの関係についても、オーストリア出張を断念せざるを得なかったため、進行していない。
結果的に、本年度は日本にいながらにして、冷戦期に関わるふたりの知識人について洞察を深めることとなった。一人は20世紀イギリスを代表するマルクス主義歴史家エリック・ホブズボームについてであり、リチャード・エヴァンズによる800ページほどのホブズボーム伝の共訳作業に携わった。興味深いことに、ホブズボーム自身がマルクス主義者であったことから、戦前、彼が学生時代に体験した共産主義思想の醸成およびソ連共産党への接近と、戦後におけるそこからの乖離について多くを知ることとなった。もう一人は、社会主義作家として知られるジョージ・オーウェルについてである。彼は冷戦が本格化するまえに死去したが、彼自身が「冷戦(cold war)」という言葉の創始者であることは、あまり知られていない。そんな彼の遺作『一九八四年』は、ソ連を典型例とする全体主義社会の恐怖を描いた警告の書ともいえる。今回、このオーウェルの原作を元に冷戦期の初期と後期に制作された同名の2本のテレビ番組と2本の映画作品をテーマに、冷戦期に西側陣内で鉄のカーテンの向こう側の世界がいかに解釈され、娯楽作品として消費されていったのかについて考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスの世界的な感染爆発により、出張予定であったイギリスに行くことができず、資料収集がまったくできなかった。同様に、コロナ禍は大学の教育現場をも直撃し、令和2年度の開始から全面的に急遽オンライン授業に切り替わったため、そのための準備やフォローアップで研究時間のほとんどが削られたため
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今後の研究の推進方策 |
去年度まったく進まなかった研究課題について、最終年度である本年度(令和3年度)は最大限の努力を払い、キャッチアップするしかないと思っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による様々な制限と弊害により、予定していた研究予算を使用することができなかった。繰越された金額は、おもに海外出張費で使用する予定である。
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