従来の日本史研究では、植民地の問題が主に帝国主義支配の特質や矛盾として捉えられ、大日本帝国崩壊による断絶が前提とされてきたことに対し、戦後日本の植民地主義を問題とする本研究は、学術的に新たな視点を提起するものである。また、植民地主義が隠蔽され再生産され続けたことを戦後における国民国家再興過程におけるジェンダーの問題と関わらせて検証する点では、グローバル化の中での他者との共生が課題とされている現在において依然として解消されることのない日本国内外における差別や排除の問題を考察するうえで、問題の根幹にかかわり示唆を与えるものとして、社会的意義を有するものといえる。
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