研究課題/領域番号 |
18K00930
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
青木 歳幸 佐賀大学, 地域学歴史文化研究センター, 特命教授 (60444866)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 種痘 / 除痘館 / 緒方洪庵 / 三宅春齢 / 宇田川興斎 / 中島友玄 / 有信堂 / 牛化人痘法 |
研究実績の概要 |
研究3年目の令和2年(2020)は、コロナ禍により、福井県立文書館にて予定していた研究会は開催できなかったが、代表者及び各研究協力者の連携により、『天然痘との闘いⅡ―西日本の種痘』(岩田書院)において、13本の論考と4つのコラム、4編の史料紹介を得ることができた。内容は、青木歳幸(西日本の種痘、広島藩領の種痘)、W・ミヒェル(牛痘導入の黎明期におけるゴルトシュミット著『牛痘と種痘の概史』の受容、上方蘭学の草分けー吉雄元吉について)、中澤淳(長州藩と山口県の種痘)、梶谷光弘(松江藩における種痘の始まり-松平家文書を中心として)、海原亮(鳥取藩地域への牛痘苗伝来と普及)、木下浩(備前・備中の種痘)、松村紀明(種痘の「終わり」)、井上淳(伊予の種痘)、古西義麿(阿波の種痘、土佐の種痘、近江の種痘)、淺井允晶(大坂除痘館と備中足守除痘館)の論考とコラムに有坂道子(京都有信堂の種痘)、青木歳幸(香川の種痘医たち)、川上淳(官許された大坂除痘館)、淺井允晶(牛化人痘法の作出と小山肆成)と史料編に青木歳幸・田中美穂(津山藩主子弟への種痘記録―宇田川興斎「引痘録」他)、木下浩(医師用の種痘入門書―難波経直『種痘伝習録』、岡山県下の種痘事情―中島友玄筆『種痘諸事留』)、青木歳幸(広島藩領最初の種痘日録―三宅春齢『引痘日期手録』)を得て、公開できた。また科研費報告書としての史料集『史料・西日本の種痘』(佐賀大学地域学歴史文化研究センター)において、松村紀明(「種痘ニ関スル医師ト縣官ノ問答」)、青木歳幸(広島藩儒者頼山陽一族の医師頼来洲の診断記録「処置小録」、幕府痘科医師池田瑞仙の門人録「升堂門生録」、広島城下医師三宅春齢の「補憾録」)を公刊し、種痘史料集成と種痘普及意義の検討という本科研費の目標を西日本において実質化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究3年目のため、1年目、2年目に調査し収集した史料を材料に、論考集や史料集を2冊刊行できた。当初は、中国・四国と近畿と各1冊を刊行予定であったが、緒方洪庵の除痘館の影響が西日本一帯に及んでいることと、一方で長崎・長州藩・伊東玄朴らのネットワークによる種痘伝播の流れも見られたので、西日本と一体化し、俯瞰的・全体的に、種痘研究を進めることとした。当初計画はおおむね順調に進捗した。
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今後の研究の推進方策 |
研究4年目の今年度は、年次計画に沿って、『中部日本の種痘』・『史料中部日本の種痘』と題して論考集と史料集の2冊を刊行予定である。論考については、西巻明彦(新潟の種痘)、海原亮(越中の種痘、加賀の種痘)、柳沢芙美子(福井の種痘)、青木歳幸(信濃の種痘、静岡の種痘、三重の種痘)、中野賢治(甲斐の種痘)、杉村啓治(飛騨・美濃の種痘)、山内一信(伊藤圭介の種痘)史料集に、中野賢治(山梨村松家史料)、青木歳幸(信濃熊谷家史料)、稲垣裕美(内藤記念くすり博物館所蔵種痘史料)などを予定して、それぞれ、執筆準備をすすめている。 しかし、コロナ禍で調査活動が制限され、新たな史料収集が困難になっているため、研究遂行の努力はするが、一部に進捗状況に遅れがでるかもしれない。その課題の対応策として研究計画の一年延長をお願いせざるをえないかもしれない。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、調査のための出張が制限されたため、次年度に繰り越し、調査旅費に使用する計画である。
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