研究課題/領域番号 |
18K00931
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
乕尾 達哉 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (30164065)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | サトウ / アストン / チェンバレン / 和書 / 日本学 |
研究実績の概要 |
2018年度の主要な研究実績は英国の大英図書館所蔵のサトウ旧蔵和書の調査にかかるものと、日本大学文理学部図書館所蔵のチェンバレン旧蔵和書の調査にかかるものとがある。 前者については、サトウ旧蔵和書50点ほどについて、書き入れ、蔵書印、大英博物館の受入れ印を調査した。蔵書印については、同じ「英国 薩道蔵書印」の印文を有する蔵書印が2種類あること、また、ひらがなの印文「さとう」の蔵書印も存在したことが判明した。受入れ印については、主に①「1884年9月22日」、②「1885年6月13日」、③「1894年2月13日」、④「1894年3月21日」⑤「1906年4月7日」の5種類の日付が確認され、このうち、③④についてはやはり当時の先駆的英国人日本学者の一人で日本美術の収集家として名高いアンダーソンが日本美術関係の和書等を大英博物館に寄贈(売却)した日付であることから、これらの受入れ印記を有するサトウ旧蔵書はサトウからアンダーソンに譲渡された和書であり、それらをアンダーソンが他の日本美術関係和書等とともに寄贈したものであったと推測される。それらの和書はおおむね美術書であったり、挿絵つきであることもこの推測を裏付ける。⑤はすべて例外な仏教関係和書・漢籍であり、サトウと親交のあったパットン牧師から大英博物館に寄贈されたもので、サトウは仏教関係の多くの書物をパットンに譲渡していた事実が確認された。残る①②はサトウ自身によって寄贈された日付と推測される。 後者については、チェンバレン旧蔵和書のうち、もとサトウ旧蔵の和書約120点につき、書き入れ、蔵書印を調査した。蔵書印は、上記の2種類の蔵書印を確認し、チェンバレンの蔵書印との前後関係から、そのほとんどがサトウからチェンバレンに譲渡された和書であるが、逆にチェンバレンからサトウを経て再びチェンバレンの所蔵に帰した和書もあったことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
英国の大英図書館でのサトウ旧蔵和書の調査は1日10点という限定があるが、予定していた点数をほぼ実見して調査・撮影することができた。大英博物館の受入れ印に判読困難なものが見られるため、予想外に時間を要することもあるが、おおむね順調に進捗していると判断している。日本大学文理学部図書館でのチェンバレン旧蔵和書の調査も図書館の協力を得て、順調だった。
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今後の研究の推進方策 |
大英図書館でのサトウ旧蔵和書の調査、および日本大学文理学部図書館でのチェンバレン旧蔵和書の調査を引き続き行う。その後、英国ではケンブリッジ大学図書館でのアストンおよびサトウ旧蔵和書の調査、国内では、愛知教育大学附属図書館でのチェンバレン旧蔵和書の調査も実施して、サトウを中心とする和書の蒐集・活用・譲渡の様相を明らかにする。また、サトウと蔵書印と旧蔵和書の蒐集時期について、見通しを得たい。
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