2023年度は、2020年度および2021年度におけるコロナ禍による海外調査の停滞を取り戻すべく、2度にわたって英国の大英図書館におけるサトウおよびアストンの旧蔵和書の調査を行った。調査対象和書はあわせて60点に及んだ。調査項目はサトウおよびアストンの蔵書印の有無、挿絵の有無、大英博物館の受入れ印、サトウ・アストンによる書き込みの有無などであった。このうち、本研究課題にとってもっとも重要であったサトウの二種類の蔵書印(より古いA印とより新しいB印)の押捺状況については、その大方がB印であったが、一部にA印も確認することができた。 B印の押捺が確認できたのは、「節用集 乾」「節用集」「水鳥記」「束草集」「祖庭事苑」「諸天伝」「大蔵経綱目指要録」「西鶴俗つれづれ」「印図」「日本書紀講述抄」「絵入はちかづき」「蒔絵大全」「梵文阿弥陀経諸訳互証」「訓蒙鑑草」「合世佳娥美」「万物図解為斎画式」「大通俗一騎夜行」「今川講釈」「鎌倉街道女敵討」「太秦牛祭画巻」「伊勢風流続松紀原」「英雄図会」「改正印図」「絵本小倉山」「絵本藤の縁」「男女風体和歌教訓絵本姫小松」「教訓注解絵本歌仙」「絵本唐詩仙」「絵本百物語」「絵本ふる鏡」「絵本蘭奢待」「縁山三大蔵目録」「画苑」「画史会要」「画乗要略」「孔子一世画図大聖伝」「棠大門屋敷」「志んはん菅丞相紅葉幣」「おやこつか」「親父否早学問」「父母怨敵現腹鼓」「女水滸伝」である。 A印は「承久記」「住吉物語」「源氏物語」「とりかえばや物語」「絵本忠臣蔵」「絵本太閤記」である。 また、1882年7月27日、1894年2月13日および1894年3月21日の受入れ印を有する挿絵の多い和書はサトウがアンダーソンに譲渡し、アンダーソンが大英博物館の売却したものだが、アンダーソン自身のものと思われる書き込みが見受けられた。
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