| 研究課題/領域番号 |
18K00939
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| 研究機関 | 明星大学 |
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研究代表者 |
小林 一岳 明星大学, 教育学部, 教授 (20298061)
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| 研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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| キーワード | 紛争 / 戦争 / 国郡 |
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| 研究実績の概要 |
本研究の目的は、国郡境目紛争に関する史料を抽出・収集してデータベースを作成することにある。研究の意義としては、データベース作成によって、国郡境目を伝統的なものとしてとらえるのか、また地域社会における紛争と秩序形成から新たに再生産されたものなのか、という従来対立点となっていた点の解決を目指し、さらに国郡境目紛争の時代・地域の比較研究を行うことで、中世の戦争の実態を明らかにすることである。
具体的には、各自治体史から山野紛争と国郡紛争の史料を抽出する作業を行った。収集方法としては情報カードに必要項目を記入する形で実施した。情報カードのフォーマットについては、国郡紛争に関する、①年、②月、③日、④地域、⑤紛争当事者、⑥紛争の原因・状況、⑦解決方法、⑧原出典、⑨掲載書誌等の情報を盛り込むこととした。本年度は東北・関東・北陸・中部・近畿を対象として史料抽出・収集とデータベース化の作業を実施した。
それと同時に適切な地域を設定し、史料調査や現地調査を実施して国郡境目紛争の歴史的背景について考えた。本年度の調査地としては播磨・摂津・丹波、三国国境地帯の調査・研究を実施した。この地域は、平安期以来住吉社領の山が国境を越えて広がっている地域であり、南北朝期とされる社領絵図も残されている。室町期には国境の山岳寺院である清水寺をめぐる境界紛争が、また近世初頭には国境をめぐって周辺村落を巻き込んでの大規模な紛争が惹起している。今年度は準備調査という形で、国境地域の住吉社領の確認と、関係史資料の現況・所蔵状態についての調査を実施した。その結果、古代～近世まで通時的に国境紛争について考察することが可能な希有の地域であることが確認できた。次年度以降、さらに研究を進めることになる。
研究会については都合５回実施して、調査研究の進め方や成果、研究代表者・連携研究者・研究協力者による関連研究の報告を行った。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由
本研究の基本であるデータベース作成作業については、本年度は３名の研究協力者に依頼して作業を進め、①東北・関東、②中部・北陸、③近畿という形で分担して作業を進めた。その結果昨年度も含めて600点以上の関係史料の抽出を行うことができ、想定していた数より国郡境目紛争に関する史料の点数が多いこととなった。関係史料の傾向としては、昨年度と同様ほとんどが戦国期の史料であり、戦国期の戦争が国郡境目の戦争として戦われたことをよく示している。鎌倉・南北朝～室町期の戦争と戦国期の戦争を比較研究する際の重要な点であると考えられる。
また、地域における史料・現地調査としては、播磨・摂津・丹波国境地帯の調査・研究を実施した。今年度は準備調査という形で、国境地域の住吉社領の広がりの確認と、関係史資料の現況・所蔵状態についての調査を実施した。
その結果、国境地域に所在する山岳寺院である清水寺に多くの紛争関係史料が所蔵されていることが確認できた。点数が多いため、今回は史料確認にとどまり、詳細な調査については来年度実施することにした。また、紛争地域の中心にあたる大川瀬住吉神社に所蔵される、南北朝期のものとされる住吉社領の絵図についての実見調査を実施した。その結果、従来足利義詮とされている裏書き花押が、足利義満のものである可能性を確認することができた。研究の新たな進展のきっかけになると思われる。
４年計画の２年目としては、データベースに所載すべき史料の点数が予想より多くなったという点はあるものの、おおむね順調に進展していると評価できる。
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| 今後の研究の推進方策 |
今後は、継続して国郡境目紛争に関わるデータベースの作成作業を実施する予定である。戦国期の史料がかなり多くなることが予想されていることから、現在作業に従事する研究協力者の３名を、さらに１～２名程度増員して作業の進展を早める予定である。そして、現在行っている東北・関東・北陸・中部・近畿に加えて、中国・四国、九州の作業に取りかかることとしたい。人件費（謝金）については、これまでの余剰分があり、それを充当することにしたい。
また、国郡境目紛争地域の調査については、播磨・摂津・丹波国境地帯の調査を実施する予定である。特に紛争関係史料が多い、播磨清水寺の文書調査を実施することとしたい。また同時に、地域に複数存在した住吉社領荘園の現地調査を実施する。この地域の住吉社には、田楽などの神事祭礼が残されている。いわば国境を越える文化、ということもできる。その祭礼調査なども実施したい。
また１年目に実施した伊賀・甲賀国境地帯の調査については、天正元年の国境紛争に関する史料調査をすでに実施したが、伊賀市が近世の国境紛争関係史料を収蔵していることが確認された。今年度に補充調査を行い、当該地域の中近世移行期の国境紛争についての研究をさらに進めることととしたい。
さらに、年に６回程度の研究会を実施することで、研究代表者・連携研究者及び研究協力者による共同調査・研究を進めることにしたい。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
今年度計画では30万円を予定していた史料調査・現地調査の旅費については、摂津・播磨・丹波国境地帯の予備調査については実施した。しかし、伊賀・甲賀国境地域の補充調査については、３月に計画していたものの新型コロナウイルスの影響で調査の実施を延期したため、旅費については余剰分が出てしまった。また、人件費として予定していたデータベース作成のための予算であるが、思ったより史料点数が多かったため、予想していた冊数までには至らなかった。
次年度は、新しく調査地として設定した播磨・丹波・摂津国境地域の史料・現地調査を実施することにする。その際、史料点数が多いこともあるので、研究代表者・連携研究者以外に研究協力者も調査に関わり、その分の旅費として充当したい。また、伊賀・甲賀国境地域の補充調査を実施することにしたい。
データベース作成については、新たに研究協力者を１～２名程度補充して作業を進めることにしたい。次年度使用額はその分に充当することとしたい。
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