• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

植民地テクノクラシーを超えるための台湾人による立憲的自治構想に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K00940
研究機関早稲田大学

研究代表者

野口 真広  早稲田大学, 地域・地域間研究機構, その他(招聘研究員) (30386560)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード台湾史 / 植民地史 / 立憲政治 / 民族運動 / 楊肇嘉 / 地方自治
研究実績の概要

本年度はJSPS海外特別研究員RRAとして台湾の中央研究院台湾史研究所に滞在中であることを活かし、台湾内での資料調査を優先的に進めた。その結果、本研究課題の主要な研究対象である台湾人民族運動家の楊肇嘉に関する蔵書調査および関係者への聞き取り調査を実施することができた。楊肇嘉の約2000冊に及ぶ蔵書は、彼および同志の運動家たちが学習した立憲主義に関する政治・経済・法律等の専門書を多数含んでいる。蔵書は膨大な量であるため、目録作成をしつつ内容調査を進めている。
蔵書には多数の書き込みもある。また中央研究院の台湾史研究所が所有する楊肇嘉の関連資料からは、彼が常任理事として指導していた地方自治連盟の会議録や政治演説会の記録がある。これらの一次資料と蔵書を照らし合わせつつ、台湾人民族運動家の政治学的知識の源泉と、それらの吸収過程を検証しているところである。
また楊肇嘉の戦前戦後を通じた同志とのネットワークに関しても調査を進めた。例えば、1933年に朝鮮の地方自治調査へ実地調査で出かけた際に同行した葉栄鐘、葉清耀、そして戦後に台北市長を務めた呉三連である。彼ら同志の政治学・植民政策学の知的基盤を検証してみると、楊肇嘉が中核として活動していた新人会(在京日本人留学生・運動家)の研究活動、民族紙の『台湾民報』の論説・記事、地方自治連盟の講演・出版などがいわば知的公共財として機能していたことが分かる。彼らは社会を変えるための志を同じくするだけでなく、知的公共財をも共有していた。彼らの言論活動と楊肇嘉の蔵書を照らし合わせることで、知的公共財および知的共同体の存在を検証することが可能である。
また比較研究のために韓国の高麗大学へ資料調査のために3か月弱滞在して、朝鮮人民族運動家の関連資料を調査した。比較植民政策史の予備的調査を実施することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

台湾での資料調査、韓国での関連資料調査を進め、それらの成果発表を日韓台の学会で報告することを優先したため、英国での資料調査は次年度へ延期することとした。
台湾において楊肇嘉の蔵書を所有する冨邦銀行オーナーの御母堂と連絡を取り、資料調査の許可を頂くことができた。海外特別研究員として滞在中の期間を活かし、貴重な資料の目録作成と内容分析を優先することが学界にとっても有益であると判断し、英米での資料調査は次年度以降に延期することとした。

今後の研究の推進方策

楊肇嘉の蔵書、楊肇嘉の同志たちが残した一次資料を分析して、彼らの知的基盤を形成する上で、どのような政治学・植民政策学の影響があったかを国内外の資料調査、楊肇嘉縁故者への聞き取り調査を中心として進めていく。具体的には蔵書内容および同志の言論活動の内容分析実施する。現在の滞在先である台湾中央研究院台湾史研究所では、副研究員の陳ジョンウォンに協力を求めることができる。また韓国においては昨冬に訪問した高麗大学アジア問題研究所の李炯植教授との共同研究も計画している。すでに日台韓の研究機関共催の形でワークショップを2回実施している。本年度も3回目の共催ワークショップを予定しているので、研究協力者の助言と支援を得ることは可能である。
本年度は英米における資料調査も実施を予定している。英国のオクスフォード大学、米国のコロンビア大学には日本植民地時代に早稲田大学の永井柳太郎や浅見登郎が留学していた。また楊肇嘉が戦後に台湾省民政庁長を務めていた時の台湾省長の呉国楨はプリンストン大学で博士を取得した。呉国楨は台湾地方自治制度や農地改革を楊肇嘉とともに進めた人物である。呉省長の時、台北市長は呉三連であった。楊と呉以外にも当時の参議会議員には日本時代の運動家が多い。台湾における立憲主義の知的系譜が内外の影響のもと、どのように形成されていったのかを明らかにしていきたい。

次年度使用額が生じた理由

本年度は、楊肇嘉の遺族が所蔵する貴重な蔵書資料の調査を行うという予定外の事情があり、台湾での資料調査に要する時間が予定よりも大幅に必要となった。また、韓国での共同研究者の了解を得ることができたために現地でのワークショップを開催することができた。これにともなう開催費が必要となり、次年度以降の費用から前倒しで支出することとした。
英国への出張は次年度の韓国出張を短縮または延期することによって次年度分の費用から捻出する予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2019 2018 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (2件) 学会・シンポジウム開催 (2件)

  • [国際共同研究] 台湾 中央研究院台湾史研究所/台湾 中央研究院近代史研究所/台湾 台湾大学日本研究中心(その他の国・地域)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      台湾 中央研究院台湾史研究所/台湾 中央研究院近代史研究所/台湾 台湾大学日本研究中心
  • [国際共同研究] 高麗大学アジア問題研究所/高麗大学Global日本研究院(韓国)

    • 国名
      韓国
    • 外国機関名
      高麗大学アジア問題研究所/高麗大学Global日本研究院
  • [雑誌論文] 台湾留学生による政治・社会的なネットワーク形成に関する試論2019

    • 著者名/発表者名
      野口真広
    • 雑誌名

      ワセダアジアレビュー

      巻: 21 ページ: 87-91

  • [雑誌論文] 台湾地方自治連盟による 1933 年の朝鮮地方自治制度視察の意義――楊肇嘉の構想する台湾地方自治制度の参照として2018

    • 著者名/発表者名
      野口真広
    • 雑誌名

      日本台湾学会報

      巻: 20 ページ: 148-163

    • 査読あり
  • [学会発表] 植民地台湾の自治2019

    • 著者名/発表者名
      野口真広
    • 学会等名
      高麗大学アジア問題研究所講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 日本への留学生と彼らのその後―中国・韓国・台湾の比較の観点から(台湾の事例)2018

    • 著者名/発表者名
      野口真広
    • 学会等名
      日本国際文化学会
  • [学会発表] 戦後直後における日本人の植民地記憶―植民地史像の再検討の一例として―2018

    • 著者名/発表者名
      野口真広
    • 学会等名
      北東アジア学会
  • [学会発表] 英国植民政策が日本に与えた知的影響の検証―エジャートンと永井柳太郎を通して2018

    • 著者名/発表者名
      野口真広
    • 学会等名
      Japanese Empire and Colonies: Population Flows and Cross-border III
    • 国際学会
  • [学会発表] The Yang Zhaojia’s intellectual diversion for the Japanese Empire’s constitutionalism:Rethinking Taiwanese constitutionalism origin’s history2018

    • 著者名/発表者名
      野口真広
    • 学会等名
      台湾政治学会
    • 国際学会
  • [備考] アジアサーキットワークショップ No.1「文化と政治」

    • URL

      http://cjs.ntu.edu.tw/news_20181215.html

  • [備考] アジアサーキットワークショップ No.2「認識と政治」

    • URL

      https://www.waseda.jp/inst/oris/news/2019/02/22/2899/

  • [学会・シンポジウム開催] アジアサーキットNo.22019

  • [学会・シンポジウム開催] アジアサーキットNo.12018

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi