研究課題/領域番号 |
18K00951
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研究機関 | 神奈川県立歴史博物館 |
研究代表者 |
根本 佐智子 神奈川県立歴史博物館, 学芸部, 学芸員 (40817607)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 江戸在勤日記 / 江戸在勤武士 / 庄内藩 / 松平造酒助 / 江戸市中取締 / 元治元年~慶応元年 / 近世史 |
研究実績の概要 |
本研究は神奈川県立歴史博物館所蔵『松平造酒助江戸在勤日記』(全五十冊)(以下『日記』と略す)を翻刻し、日記の内容を整理するとともに、松平造酒助の国元である鶴岡市にある関連資料と比較検討し、幕末期地方上級藩士における江戸在勤中の公務・諸相を研究し、理解を深めることを目的とする。松平造酒助は、庄内藩において代々重職を勤める松平武右衛門家7代であり、元治元年8月より慶応元年8月まで江戸に在勤している。『日記』はその間の日々の出来事を記し国元の両親へ宛てたものである。内容は江戸在勤中の長屋での生活から江戸藩邸での公務など多岐にわたる。 30年度は基礎作業として資料の全貌を把握することとし、①『日記』の全文翻刻作業②鶴岡市郷土資料館所蔵「松平武右衛門文書」の調査③関連資料・文献の調査等を行った。 ①は全50冊おおよその翻刻を終えた。以前翻刻した部分に関しては再校正が必要であるため、再確認の作業にも着手している。②は山形県鶴岡市の鶴岡市郷土資料館を訪問し、「松平武右衛門文書」の調査・撮影を行い、全点の撮影が完了した。「松平武右衛門文書」(約200件)は、造酒助が江戸在勤中(『日記』と同時期)に国元の両親へ宛て送った書簡類が主な資料群である。『日記』と「松平武右衛門文書」は相互補完関係にあることが判明し、両者を比較検討することにより、『日記』をより深く理解できると考えている。撮影した「松平武右衛門文書」は年代順にならべ、アルバイトによる翻刻作業にも着手した。一方で昭和初期に編纂された松平武右衛門家の家系図が含まれ、造酒助の家族関係の理解に役立った。③は鶴岡市郷土資料館より多くの情報を提供していただき、造酒助の墓所の調査、造酒助江戸在勤当時の分限帳類の調査も行った。分限帳類により、日記に登場する人物の関係性を明らかにすることができた。 また、関連文献の収集や調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していた『日記』の翻刻、鶴岡市郷土資料館所蔵「松平武右衛門文書」の調査・撮影、関連資料・文献等の調査は順調に進捗した。しかし撮影した資料の筆耕作業は、アルバイトの事務手続きに手間取り、依頼期間が短期となってしまい、十分に進まなかった。また、研究代表者が産休のため2月より研究を休止することとなった。研究再開時にはこの遅れを取り戻すべく努力する。
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今後の研究の推進方策 |
『日記』の内容を精査し、項目の整理・人名・人間関係の整理を行い、人名検索や事項検索が行えるよう整備を行う。「松平武右衛門文書」の翻刻作業を進め、翻刻内容をデータ化する。『日記』と「松平武衛門文書」の内容を比較検討し、判明した事項をデータとして蓄積する。特に長屋での私生活・公務である江戸市中取締の業務についてや、帰郷後家中武器取扱掛を命ぜられる造酒助の洋式銃器への関心・研究について等分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
筆耕アルバイトの依頼期間が短期となってしまい、筆耕作業があまり進まず謝礼金の支払いが少なかった。次年度以降は強化して進める。鶴岡市郷土資料館での撮影作業が予定よりも早く完了し、旅行回数を減らすことができたため。今後、資料翻刻の確認や現地調査のための旅費として使用する予定である。
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