研究課題
基盤研究(C)
本研究では、日本古代の諸史料に見られる「庄」について、特に、従来の荘園研究では捨象されてきた農地ではない「庄」にも目を向けて包括的に検証し、その本質と実態を解明することを目指した。その結果、「庄」とは倉屋などの建物を伴う私的領有地で、農耕に限らず幅広い経済活動の拠点として機能したこと、9世紀以前の「庄」では墾田の有無に関係なく経営方式は同じであったこと、「庄」のうち農耕の拠点として設けられ農地を含むものが10世紀以降に「荘園」と称されたこと、等を明らかにした。
日本古代史
本研究の意義は、貴族や寺社による大土地所有と農地経営の成立・展開のみが対象とされてきた従来の荘園研究に対し、農業以外の産業も含めて日本古代の土地資源活用のあり方を捉え、当時の社会・経済の実態を理解することの重要性を提起した点にある。このような視点は、古代に限らず、その他の時代における土地資源活用のあり方、ひいては現在の日本の社会における土地利用の特質を考察する上でも生かすことができる可能性がある。