研究課題
基盤研究(C)
律令国家の成立にともなう、日本古代社会の「未開」から「文明」への変転の様相を、土地をめぐる観念と制度から明らかにすることを試みた。土地の開発や所有において、呪術的・宗教的観念と開明的観念が交差しているあり方や、土地の支配・領有において、日本固有の思想のうえに中国伝来の思想が重層していく過程、さらに土地に関する禁忌をめぐって、天皇を中心とする宮廷社会のなかに、都市貴族化による大きな変化があらわれることなどについて、一定の見通しを得ることができた。
日本古代史
日本古代の律令国家は、「未開」の要素と「文明」の要素からなる、二重構造の国家として成立したとされる。だが、二つの要素の関係と時期的推移については、未解明な点が少なくない。本研究の成果は、そうした課題に応えるために、国家・社会と土地との関わりという側面から、二重構造のあり方を具体的に示したものである。その知見は、持続可能な土地利用という社会的課題をめぐる議論にも、資するところがあると考えられる。