研究課題/領域番号 |
18K00958
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
福家 崇洋 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (80449503)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 宮崎滔天 / 宮崎龍介 / 社会民衆党 / 社会大衆党 / 全国労農大衆党 |
研究実績の概要 |
研究報告と論稿に分けて報告する。まず報告から。法政大学大原社会問題研究所が主催する無産政党資料研究会で、2020年8月に「『社会民衆新聞』『社会大衆新聞』解題」を報告した。同新聞は宮崎龍介が幹部だった社会民衆党、社会大衆党の機関紙であり、その歴史的意義を明らかにした。あわせて、近代中国への知見を深めるため、京都大学人文科学研究所の「20世紀中国史の資料的復元」共同研究班などで報告へのコメントを担当した。 次に論稿である。本研究計画の集大成といえる宮崎家所蔵宮崎滔天関係資料目録を『人文学報』117号に投稿した(現在校正中で5月刊行予定)。本目録は宮崎家所蔵の滔天関係の文書、書簡をまとめたものであり、『宮崎滔天全集』未収録資料の書誌情報も含むため学術的価値は高い。 これ以外にも、宮崎家所蔵資料を参照しつつ発表した成果論稿として、『社会民衆新聞・社会大衆新聞』復刻版(三人社、2021年刊行)に掲載された同新聞の解題がある。これは上記の無産政党資料研究会での報告の成果である。また、同研究会が『大原社会問題研究所雑誌』740号で組んだ特集「無産政党の史的研究 『社会民衆新聞』『社会大衆新聞』を中心に」に「全国労農大衆党結党の検討」を発表し、宮崎龍介も関わった無産政党のひとつ全国労農大衆党が誕生する歴史的過程を初めて描いた。 上記以外にも、1930年から60年代日本の政治・社会運動史への理解を深めるために「転向に生きる苦悩 小林杜人の転向論に焦点をあてて」(『大原社会問題研究所雑誌』741号、2020年)、「戦後共産党史 レッドパージから六全協まで」(筒井清忠編『昭和史講義』【戦後篇】上、筑摩書房、2020年)、「大正デモクラシーと戦後民主主義 松尾尊兊の研究を中心に」(出原政雄・望月詩文編『「戦後民主主義」の歴史的研究』法律文化社、2021年)等も発表し本研究計画の成果に厚みを加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、宮崎滔天・龍介研究、及び日中交流史研究の土台を再構成することである。以下、資料の①整理、②保存、③公開に分けて進捗状況を説明する。①整理と③公開をあわせて述べる。1年目は宮崎滔天関係資料(特に書類)に絞り、宮崎家において資料整理を試み、2年目は滔天関連の書簡に絞って、資料整理を行った。3年目は、宮崎滔天関係資料の全体像を把握することを目指し、これまで作成してきた資料目録の統合・修正ととともに、目録公開のための準備作業を行った。また、全集未収録かつ貴重な資料については、アルバイトを雇用し、翻刻を行った。コロナ禍での緊急事態宣言等のために出張回数が予定より減ったことは否めないが、「研究実績の概要」で述べたように、当初の計画通りの研究公開に結びつけることができた。翻刻資料については紙幅の関係から、宮崎滔天関係資料目録掲載予定の『人文学報』117号に収録できなかったが、今後公開可能なものを公開していく予定である。②の保存作業についても、劣化が激しいものなどは中性紙封筒に入れるなど保護を試みた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は当初の予定の2020年度でほとんどが一段落し、成果も無事に公開できた。しかし、出張回数が当初の予定より減ったため、資料保存作業の時間を充分確保することができなかった。そこでコロナ禍による予定変更で次年度に繰り越した予算を用いて、資料保存を目的とする写真及び資料のデジタル化を今後の研究の推進方策として予定している。あわせて、中性紙封筒などの活用により貴重な資料の保存にも取り組む予定である。以上の作業を通じて、貴重な宮崎家の資料を末永く保存できる環境を整えたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行を受けて、昨年度末に引き続き宮崎家への出張を中止せざるをえない事態が長期に生じた。今後の使用計画としては、所蔵者の許可を得たうえで、資料保存のためのデジタル化などを予定している。
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