令和2年度は、前半期は新型コロナウィルスの感染拡大によって、史料調査を実施することが叶わなかったが、9月以降は石川県・富山県域の史料所蔵機関が所蔵する膨大な十村文書について、御用留・触留類を中心に収集・分析を進めた。金沢市立玉川図書館近世 史料館6回・富山県立図書館6回・宝達志水町教育委員会4回、石川県立図書館3回など、5機関でのべ20日の調査を実施し、大部の御用留約点を含む650点余りの撮影・収集を行った。特に、金沢市立玉川図書館近世史料館で、令和2度から越中国砺波郡の大型の十村文書である武部文庫が公開されるようになり、近世前期の貴重な記録類を中心に撮影・分析を進めた。 また、十村の御用留の白眉である富山県立図書館の伊東文書の御用留について、全体の7割近くの撮影を完了できたことは、今後、加賀藩領社会研究を推進するための基盤作りとなった。 新型コロナウィルスの感染拡大で、学会・研究会の開催が見送られたこともあり、研究発表の機会を作ることはできなかったが、日本史研究会編集『日本史研究』に加賀藩十村制の確立過程と相談所(寄合所)の関りを論じた査読付き論文、加賀藩研究ネットワーク編集『加賀藩研究』に加賀藩十村が有した身分意識を解明した査読付き論文、加賀藩研究ネットワーク編の『加賀藩政治史研究と史料』(岩田書院)に十村御用留の性格やその分析から明らかになる十村の郡中支配・運営の様相を描いた論文、十村たちが天保年間に取り組んだ地域的入用(万雑)の改革を明らかにした論文の計4本と、史料紹介1本を公表することができ、令和3年度刊行の論集に掲載される論文1本も完成した。
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