前近代の漁村や山村では、農村に比べ自然条件の規定性が大きく、多様な生業が展開した。海と山の生業は有機的につながる面が大きく、生産活動の基盤となる対象が個人の所有に分割されず、共同性が保たれる傾向にある。本研究では、志摩漁村、三重県北部の治田地区、そして熊野地域の3つをフィールドに、具体的な事例分析を蓄積した。志摩漁村については、海女漁の歴史を総合的に明らかにし(『鳥羽・志摩の海女ー素潜り漁の歴史と現在』)、また治田地区の山の共有林を巡る古文書群を整理し、報告書にまとめた。熊野地域については、生業自体の分析は今後の課題に残されたが、『江戸時代の熊野街道と旅人たち』で、地域特性の分析を活かした。
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