本研究では、中世日本における密教と神道の交流について考察した。特に、中世神道が思想的にどの程度まで醍醐寺の密教と関係し合っているのかを検討した。中世神道の信仰は多種であるが、その中で灌頂儀礼がある。それは師が弟子に対して天皇や神々について様々な秘説を伝えることによって弟子を解脱させるという特殊な儀礼であるが、本研究の結果、醍醐寺法流の影響を受けた中世神道の灌頂儀礼において仏舎利(宝珠・龍)の信仰だけではなく、仏母(仏を生み出す智慧)及び玉女(仏教の理想上の王の妃)の信仰も重視されていたことが判明した。これは中世神道における性と王権という課題を考えるためには重要な研究成果であると言える。
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