岡山城下を核にして近郊農村からの労働力供給状況について引き続き検討した。主として依拠した史料は岡山市立図書館蔵の小西家文書、藤原文庫、国富文庫などであり、関連史料をデジタルカメラにて収集するとともに分析作業を行った。その結果、中核的な供給地の一つである上道郡口分が不安定な生産条件を抱えており、そのことが奉公人供出の動機となるとともに、逆に奉公人輩出が安定的な農業生産の支障となることもありえるという相互規定的な関係が存在することを明らかにできた。 また大坂の仲仕についても分析結果を公表した。大坂の堀川沿いを中心にたくさんの仲仕仲間が形成されており、荷役の権利を独占していた。上荷船とともに近世大坂の運輸路道の中核的な担い手といえた。しかしながら上荷船と違うのは、幕府からの何らかの特権を得たものではなかったことであり、にもかかわらず取り結ばれた結合だった。そこから身分的な周縁部分にあっても独自な秩序化が進んでいた事実を明らかにすることができた。 また萩城下については、女性労働についての検討を行った。「取売」など女性が主として就く職種があり、それを営む女性同士の結合のあり方を見出せるとともに、不安定さゆえたえず没落の危機にさらされており、「売女」「身売」などに関わることも往々にしてあった。日用層が男性労働者であるならば、ほぼそれとパラレルに女性労働者の独自な世界も存在したことを見ようとしたものである。
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