研究実績の概要 |
本年度は次の二つの方面で大きな進展を得た。 第一点としては、 Paula R. CurtisがAssociation for Asian StudiesのブログにSurveying Premodern Historians of Japan: Past, Present, and Future Directions of the Fieldを掲示したことで、特にNetwork Visualization of Mentors and Mentees, 1946-2026には、1600年以前の日本歴史を研究している英語圏の研究者の学術的影響関係が示されている。科研研究の目指していた「系譜的研究」のうち、英語圏、特にアメリカでの研究については、この図の裏付けをとる必要があり、また、朝河貫一が位置づけられていないなど問題が無いとはいえない。 第二点としては、日本史学界において、海外での日本史研究の成果を取り込み、あるいはその現状と課題とを了解し合おうとする機運が盛り上がったことである。代表的な取り組みとして『日本史研究』705号での「外国史としての日本史研究」特集があり、また、年度末の3月には黄霄龍氏がコーディネイターとなった国際シンポジウム「海外の日本中世史研究:「日本史」・自国史・外国史の交差」が開催され、諸国での研究動向・研究環境などについての報告があった。こうした海外での日本史研究の動向の紹介は、国際日本文化研究センター『世界の日本研究』での積み重ねや、遡れば『日本史研究』590(2011年)、ジョウン・R・ピジョー「アメリカにおける日本古代史研究」(『史学雑誌』98-6、1989年)など相当の蓄積がある。本科研の当初の取り組みの計画には、学界のトレンドの追求を組み込んでいなかったため、今年度あらためてその必要性を痛感し、次年度の研究計画の中に組み込んでいく予定である。
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