研究課題/領域番号 |
18K00966
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
坂上 康俊 九州大学, 人文科学研究院, 特任研究員 (30162275)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日本前近代史 / 系統樹 |
研究実績の概要 |
今年度もコロナの蔓延が止まなかったため、調査活動は国内に限り、海外調査は次年度に延期した。国内では、法政大学の国際日本学研究センターを訪問し、小口雅史前センター長より、主としてドイツ語圏内の研究者の動向について、彼らの著作を示しながらの説明を受けた。その中では、ヨゼフ・クライナー教授及びマルクス・リュッターマン国際日本文化研究センター教授(当時)からの情報も含まれており、本研究にとって有益であり、次年度の出張調査の下準備にもなった。このほかにも、中世古文書学の日欧比較に関するシンポジウムに参加する中で、フランスでの日本学の動向について情報を集めることができた。 勉誠出版で企画されている日本中世史に関する海外での研究動向の紹介特集号に寄稿を求められたのを機会に、本研究の動機と方法、現時点での中間的な成果を短文にまとめた。この特集は次年度に刊行の予定である。この執筆の過程で、あらためて韓国や中国での研究動向について動向報告をまとめ直したり意見照会をしてみたところ、これまでのリサーチでは思想史分野への注力が足りなかったことが明らかになり、特に台湾での日本近世儒学研究の動向に注意を払うべきこと、およびヨーロッパにおいては東洋学の中で日本学が占める位置づけが問題で、その人事的な動向によって学統といった系譜的な関係が大きく左右されるのではないか、そういう意味では、本研究が「前近代日本史学」という時期と地域を限定していることによって掬い取れない研究業績が、あるいは系統樹が出てくるのではないか、という批判も受けた。これらの批判を真摯に受け止め、次年度を完成年度として系統樹の作成に取り組みたい。 機会あるごとに海外の、あるいは海外出身研究者への対面インタヴューに務めてきたが、その多様なキャリアを鑑みると、アメリカでは可能な系統樹という示し方だけではない表示を工夫してみる必要を痛感している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中間報告的な文章を雑誌に寄稿する過程で、編集者から有益なアドバイスをいただくことが出来、今後の方針が固まった。コロナも事実上収束しつつあり、海外での調査も(円安、ウクライナ戦争の影響は避けられないが)次年度には可能との見通しを得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、これまでに収集した海外で出版された学術書のデータに加え、前近代日本史を取り扱っている海外出版の研究書を精力的に読み込み、その序文や謝辞から系統樹を作り上げることに務めたい。これはそもそもの研究計画書に記したことであり、時間はとられるが翻訳アプリの進化もあり、実行は可能との見通しを持っている。 また、可能であれば海外での日本研究のセンター的施設を訪問し、その過去と現在とを調査したい。23年度にはコロナも収束していると思われるが、急激な円安の進行やウクライナでの戦闘の激化等が生じたならば、現在考えている西欧ではなく、アメリカや台湾での調査に振り代えることを考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの蔓延が続いたため、海外での調査の目途が立てられず、やむなく一年の延長を余儀なくされた。23年度には、当初予定通りの調査を実現したい。
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