研究課題/領域番号 |
18K00968
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
宮武 正登 佐賀大学, 全学教育機構, 教授 (90745324)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 陣 / 城 / 館 / 城下町 / 合戦 / 古戦場 |
研究実績の概要 |
当研究助成事業の第3年度に当たる令和2年度は、新型コロナウィルス感染症の蔓延による県内外での現地調査に対する大きな制約が令和元年度末から続く中、「大坂夏の陣」徳川秀忠陣跡、如意ヶ岳陣跡(京都市)、「戊辰の役」会津藩堡塁群(福島県)、長篠合戦武田・織田方陣所群(愛知県)、サッタ峠北条氏陣跡(静岡県)、播磨三木城攻囲網の羽柴秀吉陣所群、「島原の乱」原城攻囲戦の幕府軍陣場跡などの踏査を実施した。 織豊政権の国内統一過程で構営された「陣」の基本的形態の把握に有用な類例の実地見聞ができた一方で、室町末期の足利・細川ら幕府軍の陣や、武田、北条、上杉ら東国の在来勢力の陣所の遺構の確認を行ったことで、「陣」の内部構造の共通要素の発見につながった。この要素は江戸前期の「島原の乱」の陣所群に完成形態として継承されると考えられ、次年度も引き続いて事例把握に努める予定である。 また、12月には「陣屋」をメインテーマとして福岡県朝倉市で開催された九州城郭研究大会に出席し、藩政期行政施設としての「陣屋」と中世の軍営としての「陣」の系譜的繋がりや相違性などに関して、シンポジウムの総評の中で私見を述べるとともに意見交換に臨んだ。 最終年度は、「陣」の地方色の理解をさらに深めるために島津、大友、毛利などの西国大名の陣所や、未だ完全把握が実施されていない「島原の乱」陣跡の全体踏査を完了させる計画を持っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度末から続く新型コロナウィルスの疫禍によって、現地調査の延期を余儀なくされたことでの進捗の遅れが生じている。 この研究の主対象である「陣」跡は、各地の山系・森林の中に残存している例が大半であるため、現地踏査による遺構分析を草枯れが進む晩秋から春にかけて集中的に実施する計画であったのだが、所属大学の防疫指針に従って予定していた時期での県外出張自体が困難となり、調査対象箇所の網羅が追い付いていない。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる令和3年4月初頭から現地調査を計画・実施し、梅雨までにはコロナ禍による調査遅れの挽回を図る予定なのだが、先行きは不透明である。状況によっては計画していた陣跡群の踏査範囲を縮小し、既に得られた新知見の分析を深めることで成果報告に集約する方策も考える必要がある。同時に、これまで未確認の対象を優先した踏査計画に組み直し、疫禍の蔓延状況に応じた調査内容を検討する。 他県各機関所蔵の文書・記録類などの史料調査も、遠隔的手段を駆使した間接的方法での実施を講じていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の蔓延により、現地調査の実施に制約が出て大幅な当該年度の残額が生じたため。 新年度当初より現地調査に着手し、疫禍の様子を見ながら集中的な旅費執行を進める予定。
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