研究課題/領域番号 |
18K00968
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
宮武 正登 佐賀大学, 全学教育機構, 教授 (90745324)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 陣 / 城館 / 合戦 |
研究実績の概要 |
延長承認を受けた当該年度中に佐賀県内での陣跡の補足踏査が実施でき、豊臣秀吉の朝鮮出兵時における肥前名護屋周囲の大名陣跡(木下延俊、堀秀治、佐竹義宣、前田利家らの各陣跡)の踏査と、従来は分布範囲から漏れていた旧呼子町域の主体不明陣跡の踏査を行った。その結果、文献史料上で確認されている全国からの参集大名の数を越えた陣跡が分布している事実が確認でき、その原因に関する分析と考察を進めている。 また、大友・少弐・大内・龍造寺といった佐賀地方における戦国大名間の合戦時に設営された陣跡の踏査を実施し、元亀元年(1570)の今山合戦の陣跡(佐賀市大和町)を新たに発見した。同じく佐賀県内の神埼地方で16世紀代に数度の合戦の場となった上峰町の鎮西山城跡について、町実施の発掘調査に共同参加し、周囲の陣跡関連遺跡の有無の調査と文献史料の調査を行った。 8/5・6に大正大学で開催された全国城郭研究者セミナー「山城の階段状削平地群」に参加し、陣施設の構成空間の共通要素として各地に残る小規模平坦地群の事例報告を通じて情報ほ収集するとともに、関ケ原や三木城攻め陣城群等の特徴や遺構の性格に関する議論に参加した。 古文書・古記録類の分析として、南北朝時代からの発受給文書に記される「陣」の性格と空間構成に関する史料の抽出を行う一方、武家社会化における攻城戦の最終形態に位置付けられる「島原の乱」時の原城攻囲戦に関する当該期史料を分析し、従来の認識とは異なる「戦い」の時代的特徴と実態を見出すことができた。さらには、南島原市所蔵の伝「陣図」が延岡有馬藩の陣所の配置図であることを現地遺構との照合で証明し、近々論文発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルス感染症の蔓延により生じた現地踏査計画の遅れと、それに伴う収集データの整理と各陣跡の踏査結果の取りまとめ(特に縄張図の浄書・作成)の停滞が生じていたが、2023年度の延長期間に最も広範囲な調査成果である「島原の乱」における幕府軍の原城攻囲陣群の遺構全体図を集約・完成させることができた。このほか、関ケ原合戦や賤ケ岳合戦時の陣跡遺構群の踏査図浄書も終了し、遅れの挽回ができている。 しかし完全回復までには至らず、未集約・未整理のデータが残した状態にある。
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今後の研究の推進方策 |
未整理の踏査情報の集約と成果図の完成、収集した関係史料の分析の完了を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画延長により次年度使用額が発生した。2024年度の研究で全学使用予定。
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