研究課題/領域番号 |
18K00971
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研究機関 | 神田外語大学 |
研究代表者 |
土田 宏成 神田外語大学, 外国語学部, 教授 (00364943)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 災害 / 歴史 / 首都圏 |
研究実績の概要 |
2018年9月8日に神田外語学院本館(東京都千代田区内神田2-13-13)において、首都圏形成史研究会の主催(「例会」としての開催)、公益財団法人土木学会土木史研究委員会および岩井田家資料研究会の共催、神田外語大学日本研究所の後援により、シンポジウム「首都圏の災害史研究の現在」を開催した。発表内容は、「自治体史にみる首都圏の災害史」(首都圏災害史年表作成の中間報告も兼ねたもの)、「利根川・渡良瀬川合流地域の自然災害」、「近代土木史としての帝都復興事業」である。 過去の災害データを自治体史等から抽出して作成する「首都圏災害史年表」について、首都圏形成史研究会小委員会「首都圏災害史研究会」メンバーの協力を得て分担し、幕末から明治期までのデータを集めた。それらを統合し、首都圏災害史年表明治編(暫定版)を作成中である。 国立国会図書館憲政資料室が所蔵する「憲政資料」(幕末から現代にいたる政治家・官僚などに関わる日記、書簡、草稿などの私文書群)について、資料名の頭文字「マ」に属する人物・団体(牧野伸顕、松本学など)の関係文書を調査し、災害を含む土木史関係資料の情報を収集した。それを2019年6月開催予定の第39回土木学会土木史研究発表会で発表するための講演用論文としてまとめ、投稿した。 外務省外交史料館において明治期の災害関係史料の調査をおこなった。明治43年関東大水害への対応を検討する前提として重要と考えられる、日露戦争終結直後に発生した東北三県凶作への対応に関する史料を確認した。そこには凶作に対する各国からの支援(義捐)の動きが記録されていた。同史料などをもとに同凶作への日本政府、政党、メディア、民間団体、外国の対応について論文を作成している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「首都圏災害史年表」の作成について、首都圏形成史研究会小委員会「首都圏災害史研究会」メンバーの協力を得ながら、過去の災害に関するデータの収集と集約を実施した。その過程で困難に直面した。初年度であるため、多様な災害をどの範囲(種類や規模)まで拾い、その内容をどのように整理するのか(年表の形式)という問題について、実際に作業を進めながら意見交換をおこなう必要が生じた。試行錯誤の末に、まずは主な資料として依拠する自治体史などで「災害」として取り上げられている情報を広く収集すること、年表の書式については、災害発生の年月日・都県名・災害の種類・被災地域・被害の概要・出典など簡潔な項目にまとめることとし、明治期までの年表を暫定的に作成して、それをもとにさらに検討することとした。 当初計画では、アルバイトによる災害情報の入力作業を予定していたが、前述のとおり何をどのように入力するのかが明確にならなかったために、アルバイトの利用に至らなかった。また、災害を主題として編纂されたものを除けば、自治体史などの書籍において、過去の災害に関する記述はまとまって存在していない。そのため、過去の災害に関する情報を広く収集しようとすれば、それだけ多くの書籍にあたり、そのなかから記述を探さねばならなかった。作業に多くの時間と労力が必要になることが改めて明らかになった。 史料保存機関の調査については、東京都内の機関の調査を優先的に進めたため、東京都以外に所在する機関に対する調査が不十分になってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
遅れている「首都圏災害史年表」の作成を進める。表計算ソフトの機能を活用する。すなわち、収集した各地の過去の災害に関する情報について、災害発生の年月日を示す8桁の数字を付し、並び替えをおこなうという方法を採る。それにより最新の作業データをその都度付け加え、年表全体を随時アップデートしていく。こうすることで、協力を得ている首都圏形成史研究会小委員会「首都圏災害史研究会」メンバーによる災害情報の収集と統合の効率化を図るとともに、未完成の状態でも暫定版として年表を研究に利用できるようにする。ある程度データがまとまり、一般の利用に堪えるレベルに達したと判断された時点で公開を考える。 「首都圏災害史年表」の作成と並行して、明治43年関東大水害(1910年)を中心とする明治期の災害から個別災害の研究に着手する。「首都圏災害史研究会」のメンバーに協力を依頼し、明治43年関東大水害における首都圏各地の被害状況や対応策について、先行研究や関係史料に関する情報提供をしてもらう。そうした準備のうえで、ミーティングを開催し、研究テーマや研究分担を協議・決定する。研究成果(途中経過を含む)は、2019年度内に公開の研究会を開催して発表し、社会に広く伝えるとともに、本研究に関する意見や情報を求める。史学など人文・社会科学の観点のみならず、自然科学の観点からの分析も意識する。 明治43年関東大水害の研究に着手するのに合わせて、その被災地となった首都圏各地の史料保存機関の調査も実施する。このことで、不十分であった東京都以外に所在する史料保存機関における過去の災害に関する史料の調査を重点的に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、アルバイトによる入力作業を予定していたが、初年度のため、どのような情報をどのような形式で入力するのかについて明確になっていなかった。そのためにアルバイトの利用に至らなかった。次年度において、積極的に利用できるようにしたい。 史料保存機関の調査については、近距離の東京都内の機関における調査を優先的に進めたため、旅費を使用するような東京都以外の機関に対する調査を実施しなかった。次年度は、前年度分も合わせて実施できるようにしたい。
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