研究課題/領域番号 |
18K00976
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
吉野 秋二 京都産業大学, 文化学部, 教授 (50403324)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 山背 / 氏族 / 地域社会 / 開発史 |
研究実績の概要 |
本研究は、古墳時代~平安時代、山城(背)北部地域(現在の京都市域)を主たる対象として、諸氏族を主体とする地域開発の史的展開を考察し評価するものである。本年度は、出雲氏・小野氏に焦点をあて、古代愛宕郡域、宇治郡域を主たる対象として、研究を推進した。神亀 3 年(726)「山背国愛宕郡出雲郷計帳」、「山科郷古図」など基礎史料を蒐集・分析すると共に、当該地域の発掘調査などを蒐集・検討する作業を進めた。 学術雑誌に掲載された研究成果には、日唐良賤制の比較研究の方法について論じた書評「榎本淳一著『日唐賤人制度の比較研究』」(『唐代史研究』第23号、2020年8月)、日本古代社会における交易の制度と実態について論じた書評「宮川麻紀著『日本古代の交易と社会』(『ヒストリア』第283号、2020年12月)がある。院宮王臣家、地方豪族の地域経営、奴婢制・交易制の実態分析など、本研究と連関する内容を含む。 また、一般読者向けの選書として『古代の食生活 食べる・働く・暮らす』(吉川弘文館、2020年8月)を出版した。奈良・平安時代の食生活を、特に労働編成との関係に着目して描写したものである。地域開発と関わる労働現場における饗宴や食料給与の意義に関しても言及している。多様な史資料を有機的に活用し、古代の社会経済を具体的かつ全体的に論じたものである。 また、2021年慶北大學校人文学術院HK+事業團第二回国際學術大會「木簡から見た古代東アジアの物資流通とアジア」(2021年2月25日~26日)の第一日に口頭報告「平安京跡出土木簡の現況」(オンライン報告)を行った。報告は、平安京跡出土木簡の現況を今後の調査・研究の課題も含め考察したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、2018年度は賀茂氏居住地域、2019年度は秦氏居住地域、2020年度は小野氏・出雲氏居住地域を主たる対象として調査を実施し、2021年度は補足調査とまとめに充当するという基本計画で進めている。本年度は、これに従い小野氏・出雲氏居住地域を中心に研究を進めた。 研究代表者は、2018年度に、口頭報告「「上京」と出雲寺・御霊神社―平安京近郊の地域形成―」(日本史研究会2018年4月例会)、口頭報告「愛宕郡の氏族と古代寺院」(古代寺院史研究会第47回例会)で、小野氏・出雲氏など愛宕郡居住の諸氏族の活動と北白川廃寺など古代寺院跡との関連を追究した研究成果を発表している。本年度は、これらの口頭報告を学術論文として発表することを目指し、史資料の蒐集・分析を進めた。 本年度出版した『古代の食生活』(吉川弘文館)は、2010年に発刊した『日本古代社会編成の研究』など既発表の研究成果の内、の食生活史に関わる内容を一般読者向けの選書として書き下ろしたものである。書評「榎本淳一著『日唐賤人制度の比較研究』」(『唐代史研究』第23号)、書評「宮川麻紀著『日本古代の交易と社会』(『ヒストリア』第283号)は、最新の研究成果の書評という形で、日本古代社会経済史分野の理論・方法について、今後の研究の方向性を示した成果である。 資料論に関しては、2021年慶北大學校人文学術院HK+事業團第二回国際學術大會「木簡から見た古代東アジアの物資流通とアジア」で口頭報告「平安京跡出土木簡の現況」(オンライン報告)を行った。本報告は、平安京跡の出土木簡の特色を全体的に考察したもので、研究の遅れている平安時代の出土文字資料研究を前進させる成果で、平安京・周辺地域の地域史研究にとっても意義は大きい。 以上、当初計画と若干内容は異なるものの、概ね順調に研究を推進できた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、研究期間の最終年度にあたる。積み残した研究課題を実行するとともに、研究成果全体を総括する作業を行う。 まず、前年度までに実施した口頭報告、「「上京」と出雲寺・御霊神社―平安京近郊の地域形成―」(日本史研究会2018年4月例会)、口頭報告「愛宕郡の氏族と古代寺院」(古代寺院史研究会第47回例会)、「平安京跡出土木簡の現況」(2021年慶北大學校人文学術院HK+事業團第二回国際學術大會「木簡から見た古代東アジアの物資流通とアジア」)を学術論文として発表する作業を進める。 また、秦氏・賀茂氏を対象とした研究の補足調査として、『平安遺文』収録の平安期の売券類、九条家文書などの関係史料の精査、発掘調査成果の通覧、地籍図、地図史料の蒐集・検討、現地踏査といった作業を行う。また、上賀茂神社の膝下所領経営との比較・検討のため、伊勢神宮(三重県)、日前神社・国懸神社(和歌山県)の神郡故地に出向き、史料調査、現地踏査を行う予定である。 以上の作業を2021年度前半に終え、後半は、4年間の研究成果を総括する作業に充当する予定である。本研究の研究成果と都城制論に関する既発表論文を集成した論文集『日本古代の京と近郊地域』(仮題)の出版を目指し、作業を進めるつもりである。 京都産業大学に所属する研究代表者にとって、本研究は「ホームグラウンド」を対象とする地域史研究である。(公財)京都市埋蔵文化財研究所などの機関の調査に参加する機会も多く、社会的責任も大きい。考古学・歴史地理学など他分野の研究者に対して文献古代史の特性を発信し、学際的な調査・研究の礎を築きたい。
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