本年度は、昭和戦前期から戦後期にかけて、技術官僚がどのように自らの政治的影響力を高めようとして行動したのか調査・研究を進める予定であった。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大によって、史料調査を行う予定であった文書館や図書館などが臨時閉館したことなどによって、十分に史料の収集を行うことができなかった。 そのため、研究の計画を変更して、すでに収集した史料(茨城県立歴史館所蔵の文書や利根川治水に関する回想などの活字史料)に基づいて、利根川の治水運動への技術官僚の関わりなどを中心にして検討を加えることにした。その結果、内務省の土木系技術官僚が、利根川放水路計画を提示することで、地域社会のなかに浸透していった過程を詳細に明らかにすることができた。その成果は、関西大学経済・政治研究所から発行される予定の研究双書に論文として発表することになっている。 他に、本研究で得られた知見を基にして、戦後日本政治史の流れを概観した小文(「戦後日本政治の歴史」、坂本治也・石橋章市朗編『ポリティカル・サイエンス入門』法律文化社、2020年に収録)や、日本政治史研究の観点から公文書の電子化のあり方を論じた「公文書の電子化と日本政治史研究」(『Records & information management journal』第46号、2021年)、 田村幸男『帝国憲法期の入学と就職』(雄山閣、2019年)の書評(『日本歴史』873号、2021年)などを公表することができた。
|