研究課題
2021年度の研究活動は、本来の2018~2020年度の研究計画が、コロナウィルスの影響で成果の総括に遅延を生じたため、1ヶ年の研究期間の延期を認められ遂行したものである。研究成果の総括と公表は、次の研究報告書の刊行をもって行った。『日本古代の畿内・近国における牧の総合的研究(課題番号18K00979)平成30年度~令和2年度 科学研究費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書』(2021年10月 研究代表者吉川敏子)吉川敏子「日本古代の畿内・近国における牧の総合的研究」/ 同「近畿古代牧変遷の概要 付:近畿古代牧リスト(稿)」/ 鷺森浩之「大和国西部の牧と馬」/ 吉川真司「河内国楠葉牧の再検討」/ 佐藤健太郎「摂津国鳥養牧について」/ 山中章「日本の古代御牧・私牧の成立と展開―甲斐国御牧・都城近郊の私牧の事例から」本研究課題は、日本古代の近畿の馬牧に焦点を当て、馬の運用状況、牧の故地の推定、およびその景観復元、土地利用の変容などを文献史学・考古学・地理学の研究者が協力し、複眼的に研究するものである。近畿の馬牧を相対的に理解するために、近畿だけではなく、上野・甲斐・信濃・大隅および韓国の牧比定地を巡見し、検討を重ねてきた。その中で、従来注目されてきた遠国の生産牧とは異質な、近畿特有の備蓄牧の役割、複数の古代牧の現地比定、また推定した牧地の土地利用の歴史的変遷を提唱できたことは成果であった。各研究者の研究成果は、折々に発表してきたが、上記報告書は未発表の成果を集約し、これまでの研究活動の総括を行ったものである。