研究課題/領域番号 |
18K00980
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
兒玉 州平 山口大学, 経済学部, 准教授 (30644405)
|
研究分担者 |
酒井 一臣 九州産業大学, 国際文化学部, 准教授 (10467516)
中谷 直司 帝京大学, 文学部, 准教授 (70573377)
手嶋 泰伸 福井工業高等専門学校, 一般科目(人文系), 講師 (20707517)
久保田 裕次 国士舘大学, 文学部, 講師 (70747477)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ロンドン海軍軍縮条約 / 海軍史 / 財部彪 / ワシントン体制 / 国際関係史 / 政治経済史 |
研究実績の概要 |
本年度は戦間期に海軍大臣を務めた財部彪の日記『財部彪日記』(国立国会図書館憲政資料室蔵)を複眼的(軍事史、国際関係史、政治経済史)な視座から分析することを目的としている。 本年度については研究実施計画に基づき、(1)『財部彪日記』の翻刻、(2)国際関係史、海軍史、政治経済史の立場から『財部彪日記』を分析し、研究会を年2回(夏季、春季)開催して成果を共有、(3)代表者が東京において資料調査に行う、この3つの作業を同時進行的に行う予定であった。 (1)については、代表者と研究分担者、研究協力者が翻刻箇所を分担の上、外部の研究者とも連携しながら作業を進行している。とくにロンドン海軍軍縮条約期については、まだ若干判読できない部分も残るものの、すでにほぼ翻刻作業を終えている。 (2)「研究会の開催」については、夏季(8月研究会)は予定通り開催した。研究分担者2名から、戦前期の日本帝国を取り巻く国際秩序の変化を分析した研究報告があり、活発な議論を交わすことができた。春季については研究分担者と、ゲストを招聘した研究会の開催を予定していたものの、新型コロナウィルス感染拡大の影響は甚大で、直前で開催を断念せざるをえなかった。 (3)については夏季(8月)に尼崎(尼崎市立地域研究史料館)、秋季(10月)に東京(三菱史料館)において史料調査を行った。史料調査によって得た資料をもとに、代表者が論文3編を投稿し、2編はすでに採択され2020年度刊行予定となっている。ただし、3月に予定していた三菱史料館・東洋文庫・国立国会図書館・東京大学附属総合図書館にて予定していた資料調査については、(2)にも記した新型コロナウィルス感染拡大の影響で史料所蔵機関の閉館が相次いだこともあり、断念せざるを得なかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)『財部彪日記』翻刻・・・『日記』の翻刻については、外部の研究者とも連携しながら、おおむね予定通り進行している。特に、本研究において重要となるロンドン海軍軍縮会議期(1930年)については、ほぼ翻刻を終えた。 (2)研究会の開催・・・2019年8月については研究会を開催して、知見の共有を図ることができたが、2020年3月に予定していた研究会は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、開催が不可能となった。このため、当初予定していた年2回の研究会実施を果たすことができなかった。 (3)史料調査について・・・代表者が夏季・秋季に尼崎、東京において史料調査を実施した。概要は以下の通りである。①尼崎においては、尼崎市立地域史研究史料館において、軍縮期に尼崎市が企業に対しておこなった調査報告書を撮影した。②東京においては、三菱史料館において、軍縮期の企業再編にかかる企業史料を閲覧・複写した。ただし、春季(3月)に予定していた史料調査については、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、史料所蔵機関の閉館が相次ぎ、実施することができなかった。このために、史料調査についても、当初の予定を果たすことができなかった。 特に(2)(3)の進捗状況は、当初の予定から遅れがみられる。ただし、環境が改善し、2020年夏以降研究会の開催回数を増やす(オンライン研究会で代替する)、史料調査回数を増やすことが可能となれば、遅れを取り戻せる状態にある。以上のことから、現在までの進捗状況を「やや遅れている」とした。
|
今後の研究の推進方策 |
今後については、新型コロナウィルス感染拡大の収束状況を見ながらとなる。研究会については、Skypeなどのオンライン・ミーティングを使用することで一部代替可能な部分もあるものの、歴史研究の特質上、すべての研究会をオンラインで行うことは難しい。また、史料所蔵機関の多くが閉館していることは、研究の推進上極めて甚大な影響がある。史料所蔵機関の多くは、その機関でなければ所蔵し得ない史料を多く所蔵しているために、閉館はこれを代替する術がない。現段階では公共図書館も閉館していることが多く、オンラインで公開されている史料(たとえば国立国会図書館デジタルコレクションのうち、「図書館送信資料」)にもアクセスできない状況となっている。場合によっては研究の遂行全体のスケジュールを大きく見直さなければならない。 (1)『財部彪日記』の翻刻…翻刻を担当する代表者、分担者は、外部の研究者とも連携しながら出来うる限り正確な翻刻と人名索引の作成を行う。なお『日記』は原則として複写物が閲覧に供されるため、複写状況によって判読が難しい箇所が含まれる。事情が許せば国立国会図書館憲政資料室にて『日記』原本の閲覧を行う。 (2)代表者、分担者、協力者各自の研究の深化…史料所蔵機関の再開が大前提となる。両大戦間期の国際秩序の変容と、そのもとに展開された海軍の動向を主テーマとした論集刊行に向け、本研究の全メンバー(研究分担者,研究協力者)が各自の専門性(国際関係史、海軍史、政治経済史)に基づきテーマを選定して研究を深化させる。 (3)研究会の開催…(2)と同様に、国内の移動が可能になれば、研究会を開催して知見の共有を図りたいが、少なくとも夏季に開催する見通しは立たず、可能であれば春季(3月)の開催を目指したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大のため、3月に大阪市において予定していた研究会の開催と、東京都における史料調査が不可能となった。このため、旅費・物品費・謝金等の執行が難しくなり次年度使用額が生じた。 次年度使用額および翌年度分助成金の執行ついては、現下の社会状況に鑑み、以下の2つのシナリオに分けて使用計画を立てざるを得ない。基本的には第1のシナリオにもとづき執行することを予定するが、状況によって第2のシナリオを選択する。第1のシナリオは、比較的早期に新型コロナウィルス感染症の感染拡大がある程度収束することが前提となる。この場合は、本年度の遅れを取り戻すため、知見を共有するための研究会を当初予定よりも1回多い年3回(夏・秋・春)行うか、年1回(春)、3泊4日(当初予定は1回1日)で行う。また、東京における史料調査についても、春季に10日程度、予定よりも長期間行う。 第2のシナリオは、早期には新型コロナウィルス感染症の感染拡大が収束しなかった場合の選択肢である。この場合は、研究会や史料調査を行うことが難しくなる。このため、次年度使用額と翌年度助成金を、"Foreign Office Files for Japan"など、研究代表者、研究分担者、研究協力者が共通して利用可能なデータベースのアクセスフィーに充て、本研究の推進をはかる。
|