研究課題/領域番号 |
18K00983
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
湯山 英子 北海道大学, 経済学研究院, 研究員 (70644748)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 引揚げ・残留 / 残留日本人ベトナム家族 / 残留日本兵 / 残留台湾人 / 帝国崩壊 / 仏領インドシナ・ベトナム / 戦後東南アジア / 戦後賠償と冷戦 |
研究実績の概要 |
最終年となるはずだった2020年度は、2019年度後半と同様、ほとんど調査はできなかった。研究開始から課題として挙げた次の2つについては、①可能な限り「引揚げ」を数量的に確認は、まだできていない、②「引揚者」「残留帰国者」に関する個別体験の集約・集積については、一部入手することができた。必要個所を整理し、事例の集積を進めているところである。関係者への聞き取りは、ほぼ不可能だったため、文章化された個別体験の収集に切り替え、地域史からのアプローチを試みた。「残留帰国者」が比較的多い北陸地域の県立図書館や文書館を当たることとなった。地方新聞記事、回想録などを入手できた。①の「引揚者」は、外交史料館の「外国旅券交付表」から渡航時点の目的を追ってみたことと、「残留者」は1972年~1984年の在留邦人数から該当者の推測を試みた。 また、2020年はじめにこれまで収集してきた史・資料を整理した<研究ノート>を発表したことで、新たな資料の情報が寄せられた。なかでも「在外私有財産調査票」(1964年頃)の存在は、とても有益の情報となった。残念ながら閲覧できていない。 さらに、「引揚げ」について多くの研究実績のあるサハリン樺太史研究会での口頭発表が延期となったままであり、研究の理論的枠組み・方法論の見直しがまだ出来ていない。但し、これまでの同研究会の議論のなかで「冷戦時における境界の変化がどう影響したのか」という指摘があり、この部分を踏まえた分析を進めているところである。 また、国際交流事業の視点から戦後への日越関係の連続性に関する研究会に参加したことで、引揚者や残留者が戦後の日越関係に果たした役割と、本研究とのかかわりについて新たな発見があった。多くの制約があったものの、模索しながらの調査・研究を多少なりとも継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「引揚げ」「残留」に関連した資料を持つベトナム関連団体の史・資料にアクセス許可が下りたものの(都内)、コロナ禍のため保留状態である。2020年11月に訪問予定だったが、直前にキャンセルがあった。また、2021年1月以降、外務省外交史料館は緊急事態宣言が出たため閲覧は不可能になった。聞き取り調査は1回のみ実施したが、茨城県から上京予定だった対象家族2人が急遽キャンセルとなり、聞き取りの機会を逃した。もう一つ大きな理由は、すべての担当授業がオンライン対応となったため、その準備に膨大な時間を要したことによる。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍において、その収束如何によるが、前年度に掲げた史・資料調査は、東京と台湾を予定している。聞き取り調査、資料収集については、東京での関連団体事務所倉庫、台湾中央研究院台湾史研究所での調査、神奈川県立公文書館に所蔵する「在外私有財産調査票」の閲覧を予定している。また、本研究と関連のある、共同研究「マルチ・アーカイブズ的調査によるアジア・太平洋戦争期日本・ベトナム関係史の再検討」(代表:宮沢千尋)が2020年4月から本格的にスタートし、戦時期の資料に関する情報交換が可能になった。 さらに、本研究の中間報告<研究ノート>を精査するとともに、理論的枠組みと方法論を再検討し、論考として発表する準備を進める予定である。併せて自身の博士論文のテーマ「仏領インドシナにおける日本商の研究」に関する著書の執筆に着手する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた資料調査が出来なかったことによる。調査・研究を1年延長した。残額の408,094円については、次年度の調査費用に充足する予定。
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