研究課題/領域番号 |
18K00985
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿南 友亮 東北大学, 法学研究科, 教授 (50365003)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中国共産党 / 中国国民党 / 政・軍関係 / 個人独裁 |
研究実績の概要 |
2021年度は、台湾の国民党・党史館および米国の国立公文書館などで調査・収集済みの史料の分析を続け、そこで得た知見に基づき、論文と書評を発表した。また、2020年度におこなった学会報告(アジア政経学会春季大会「四平街のソ連兵ー米・台の機密文書からみる中国内戦へのソ連の軍事介入」)を学術論文として発表するための作業に着手し、来年度に投稿する見通しが立つ段階まで執筆を進めた。 論文「中国における政・軍関係の100年と古田会議」(『海外事情囲』第69巻4号、2021年7月)では、毛沢東が共産党の軍隊を掌握することに非常に苦労した実態をあきらかにしたうえで、中国国民党と中国共産党が基本的に同質の政軍関係、すなわち党の特定の指導者が軍隊の指導権を掌握すると軍隊がその指導者の私的権力基盤となり、個人独裁体制を生み出すという構造を共有しており、これが中国における政治の近代化(議会制民主主義や社会主義の定着)を阻害する巨大な障壁になっているという議論を展開した。習近平政権における個人独裁的傾向の顕在化もこの構造に基づき説明することが可能である。 蒲豊彦氏の著書(『闘う村落ー近代中国華南の民衆と国家』、名古屋大学出版会、2021年)に関する書評では、清王朝と共産党の革命根拠地のガバナンスにみられる共通点(むき出しの暴力に大きく依存した武断的統治)について論じた蒲氏の議論に対して、前述した「暴力の独占と個人独裁の再生産」の観点から問題提起をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、今年度も新型コロナ・ウイルスの感染拡大の影響で台湾および米国での史料調査は断念せざるをえなかった。しかし、2019年度中に収集した史料が大量にあり、その分析を着実に進めたので、研究は進展しているといえる。昨年度はその分析結果を学会で報告し、そこでのフィードバックを加味する形で今年度は学術論文を書き進め、来年度の秋には学術誌に発表できる見通しである。また、今年度は、それとは別に「研究実績の概要」に示した研究成果発表をおこなった。これらの点に鑑み、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、これまでの研究内容をまとめる形で学術論文を発表する予定である。新型コロナ・ウイルスの感染状況が落ち着き、台湾への渡航が可能となれば、追加の史料調査をおこない、その結果を論文の内容に反映させたいと考えている。もし、それが難しい場合でも、すでに判断材料は豊富にあるので、手持ちの史料に基づき論文執筆を進める。 本研究の成果を幅広く社会に向けて発信するために、来年度は一般書の執筆にも本腰を入れる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは、新型コロナ・ウイルスの感染拡大により当初予定していた台湾および米国での史料調査を実施することができなくなり、旅費を全く執行することができなかったことが主たる理由である。次年度に新型コロナ・ウイルスの感染拡大が落ち着き、台湾や米国での調査の目処が立てば、次年度使用額を旅費に充てる予定である。それが難しい場合は、まとまった史料を書店経由またはオンラインで購入する費用に充てることを考えている。
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