研究課題/領域番号 |
18K00987
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
三津間 康幸 筑波大学, 人文社会系, 助教 (00568280)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バビロン天文日誌 / 大英博物館 / アッシリア占星術レポート / 粘土板 / バビロン / 劇場 / オーロラ / シタデル |
研究実績の概要 |
アッカド語楔形文字粘土板文書『バビロン天文日誌』同様、バビロニアやアッシリアの天文学者がアッカド語、楔形文字により、粘土板上に作成した資料である、「アッシリア占星術レポート」を分析した。そしてその中にあるオーロラ様現象記録3点を発見し、報告した論文を共著により作成した。研究代表者は粘土板文書の模写、翻字、英訳などを行い、すでに刊行されているものの訳を一部修正した。 また大英博物館所蔵の未公刊のアッカド語楔形文字粘土板BM30617に記されていた天文日誌は、かつて研究代表者が2011年から2013年にロンドンに滞在していた際に写真撮影、寸法測定などを済ませていた資料の一つであるが、この写真やサイズの情報をもとに、新たに粘土板の模写、楔形文字のアルファベットへの翻字、アッカド語テクストの英訳、各行の語句への注釈を作成し、さらにこの粘土板の性格や年代についての詳細な議論を添えて同日誌を公刊する論文を刊行した。この日誌の冒頭に書かれていた年代は欠損しているが、セレウコス朝のアンティオコス王とその子アンティオコスの共同統治時代の(メソポタミア標準暦の)IX月の最初の4日間の天空観測の一次的な記録であることは、残されたテクストから間違いない。本論文では王名などを手掛かりに、この日誌が何年に位置づけられるか、その候補を複数提示した。 さらに、日誌に見えるバビロンのシタデルやギリシア式劇場についての記述を分析した発表や、バビロンを含む西アジア都市の研究史を通覧した発表を行い、その成果を論文として掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は特に未公刊の日誌粘土板BM30617の公刊によって、現行刊本に全く載せられていない新たな日誌粘土板を学界に公表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度も同様の公刊作業を継続し、学会に対してこれまでの刊本では知られていない資料を積極的に提供していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行により、2020年3月にはすでに緊急事態宣言の発令が予想された。実際に筑波大学図書館等への出入りが制限される状況が2020年4月以降生じ、21日から同館は全館休館となっている。このような状況にあっても研究を円滑に遂行するため、図書館内で閲覧していた文献を新規に購入する必要があり、次年度使用額および2020年度分の助成金の一部をその費用に充てることとする。
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