研究課題/領域番号 |
18K00990
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
二木 博史 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (90219072)
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研究分担者 |
上村 明 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 研究員 (90376830)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 外邦図 / モンゴル近現代史 / 内モンゴル / 軍用地図 / 陸地測量部 / 参謀本部 |
研究実績の概要 |
研究代表者は2019年8月に内モンゴル自治区の旧チャハル地方で現地調査を実施。外邦図にえがかれた地名、景観を現在と比較し、外邦図の記載が正確であり、また自然環境の変化の資料としても有用であることが証明できた。この調査については「チャハル地方現地調査報告―スウェーデン伝道団の活動拠点あてをたずねて」『日本とモンゴル』(139号・140号合併号)のなかで記述。 1918年の春から夏にかけての陸地測量部による外モンゴルの秘密測図の概要と測図の成果のひとつとしてのキャフタ附近の地図について論文「陸地測量部によるキャフタ近辺の地図の作製―1918年の臨時測図班による秘密測図を中心に―」『モンゴルと東北アジア研究』(4号)を執筆。陸地測量部の活動の歴史『外邦測量沿革史 草稿』の記録とモンゴルの文書館に保管されている文書史料の記述が一致しており、外邦図の作成のプロセスが具体的にあきらかになった。 1939年のハルハ河戦争(ノモンハン事件)の要因になった係争地についての当時の主要な軍事地図を整理して「1930年代に日本の軍部が刊行したハルハ河地域の地図について」『モンゴルと東北アジア研究』(5号)を執筆。日本がわの刊行した軍事地図にみられる主要な相違点をあきらかにした。 研究分担者は昨年に引き続き、旧フレー(現在の首都ウランバートル市)の古地図とその周辺を含むトゥシェート・ハン・アイマグ中旗の地図に反映された旧フレーの都市空間の認識を明らかにする目的で、2019年7月16日から8月10日まで、モンゴル国ウランバートル市内の国立博物館、ザナバザル美術館、国立中央図書館に所蔵されているモンゴル古地図についての調査とその分析を行った。また、国立博物館で開催されたハルハ河戦争の戦勝80周年記念特別展やスフバータル広場での式典における、地図と戦争の対象となった国境の表象について調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外モンゴルでの外邦図の作成については、モンゴルの国立中央文書館に所蔵される文書に記録された「商用で入国する日本人」のリストにあらわれる人名が、陸地測量部の活動の通史たる『外邦測量沿革史 草稿』に記載された偽名リストにしるされた人名と完全に一致することが確認され、1918年の秘密測量の時期、ルート、その成果について、具体的にあきらかにすることができた。これは外モンゴルを対象にした陸地測量部による測図の研究をおおきく前進させうる重要な研究成果をみなしうる。 2019年度には内モンゴルでも現地調査を実施することができ、同地域が日本の間接的支配下にはいった時期の精密な測図、空中測量による測図によって作製された外邦図と、1910年代に秘密測図によって作製された10万分の1地図の双方を内モンゴル近現代史の資料として、どのように使用しうるか、という問題に関し、展望がひらけた。 外モンゴルの場合も、内モンゴルの場合も、日本の陸地測量部による測図の成果が、当該の地域のはじめての近代的方法による地図の作製になっている場合がおおく、外邦図が景観の復元、歴史記述に有用な資料になりうることを証明するという本研究の目的はおおむね実現されつつあると評価しうる。
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今後の研究の推進方策 |
1918年に陸地測量部が外モンゴルで秘密測図を実施した地域のうち、ウランバートルから比較的ちかい場所をいくつかえらび、2020年9月に現地調査を実施し、当時の測図の精度、現在の景観との比較、地図からよみとれる独自の情報の確認をおこなう。 ウランバートルで2020年9月にワークショップをひらき、本課題の成果について、現地の研究者の評価をあおぐ。 最近、防衛省防衛研究所に移管された外邦図のうち、モンゴル関係の、他の機関には所蔵が確認されない資料を精査し、国立国会図書館、アメリカ議会図書館に所蔵される分とあわせて、モンゴル地域の外邦図のデータベース構築のための基礎的作業をおわらせる。
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次年度使用額が生じた理由 |
地図資料(内モンゴルの外邦図)を購入する計画であったが、予算をオーバーしたため、次年度に購入することにした。 当該の地図資料の購入にあてる予定。
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