研究課題
基盤研究(C)
本研究は、中国・三国時代(西暦3世紀)を代表する出土資料である長沙走馬楼三国呉簡を用い、その史料研究と出土地長沙周辺の歴史的・地理的環境の検討を踏まえ、当該期長沙の社会構成を簡牘・文献の両面から解明するものである。五代十国期(西暦10世紀)以降の地方志史料等を傍証として活用し、走馬楼呉簡中に出現する臨湘県内の郷の位置関係、さらに臨湘県外の重要地点と臨湘県の繋がりを、丘・里および労役負担者との関連から確定・把握する成果を得て、韓国での国際シンポジウム・中国の学術誌で公表した。
中国史
走馬楼呉簡は、三国時代の中国南方地域の地方支配と文字文化を把握する上で一級の史料であるが、そこに現れる地名等の所在が明らかでなく、文献史料等から知られる長沙周辺地域の歴史との関係が十分把握されていなかった。本研究の成果はこの点を前進させるものであり、簡牘研究によって文献に基づく従来の歴史理解を深化させ、今後の魏晋期簡牘研究、ならびに古代東アジア書記文化形成と国家形成の研究の上で援用可能な分析手法を提供するものである。