ポスト・モンゴル期に、特にマムルーク朝領内で多数産み出された歴史書の相互関係について、黒死病の記述やイブン・ハルドゥーンの伝記などを取り上げて検討した。その結果、エジプト・シリアの東方と、マグリブ・アンダルスの西方とで、主に参照される文献に差が見られる一方、マクリージーのように地理的境界を越えて幅広い関心をもつ著者がいたことが明らかになった。この成果は、同時期のアラビア語歴史叙述研究、知識人および知的ネットワーク研究に資するものである。 また、出版予定の『道程』の英語訳注付き批判的校訂テキストは、マムルーク朝時代史研究だけでなく、14世紀後半の西アジア、地中海世界の研究のための基盤となる。
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