研究課題/領域番号 |
18K00999
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
八尾 隆生 広島大学, 文学研究科, 教授 (50212270)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 國朝刑律 / 刑律 / 明律 / 唐律疏議 / 貶資 / 天南餘暇集 / 洪德善政 / 黎聖宗 |
研究実績の概要 |
まず本研究の最重要史料である黎朝初期に編纂された『國朝刑律』校合本の出版作業を継続して行った。ただ作業中に、他の黎朝前期史料も付録として載録したいとの出版社側の要望があったため、急ぎ『天南餘暇集』『洪德善政』など、他の黎朝期法令集の原稿を作成し、原稿に組み込んだ。さらに「解題」部分に論証上の不備を発見したため、その部分の修正・削除に手間取り、残念ながら原稿ゲラは現段階で最終校校了までしか進んでおらず、索引の作成もまだであるし、紙媒体で出版した後、どうやってより広く本書が利用できるかその方策を探らねばならない。日本で出版の後は、「解題」部分は既にヴェトナム語版が存在するので、注の部分をヴェトナム語訳することで、版権さえクリアできればヴェトナム本国でも出版を実現させたいと考えている。 史料の分析としては、『國朝刑律』その他にみられ,中国法には見られない爵位を降下させる「貶資」と呼ばれるヴェトナム法独自の量刑制度に注目し、その実態を解明すべく、『國朝刑律』の諸条文と、関連史料の読み比べを行った。その結果、同制度は『國朝刑律』のもととなった李陳朝期から主に爵位を降下させる量刑制度として存在し、『國朝刑律』にとりこまれたが、五代聖宗時代に職・爵位の制度が大きく変わったことから、「貶資」制度はその実質を失い、黎朝後期には年代記によれば「貶資」ではなく、「貶職」が一般的となったことを解明した。この成果は、近く学術誌に研究ノートとして公開する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のごとく、校合本の付録にあたる「解題」部分に不備を発見し、それを確かめるために出版作業を一時止め、京都大学等で関連史料との照合を行い、修正を行ったため。また2020年に入ってから新型肺炎の蔓延により、出版社もすべてテレワーク作業となり、本編著だけでなく、すべての校正作業も遅れが生じているとの連絡を受けている。
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今後の研究の推進方策 |
とにかく編著は最終校正まで来ているので、あとは索引を作成し、今年度中前半の刊行をめざす。また貶資に関する研究ノートも、予定していた学術雑誌が新型肺炎にともなって刊行一時中止となったため、本ノートの読者が多いと思われる他の雑誌(今のところ学外研究員をつとめている慶応義塾大学言語文化研究所の紀要が有力)を見つけ、投稿を行う。
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