| 研究課題/領域番号 |
18K01000
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| 研究機関 | 高知大学 |
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研究代表者 |
遠藤 隆俊 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (00261561)
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| 研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | 円仁 / 入唐求法巡礼行記 / 文書 / 唐代 / 状 / 牒 / 帖 / 仏教 |
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| 研究実績の概要 |
前年度は、日本僧侶の中の円仁を中心に、彼の日記である『入唐求法巡礼行記』に記録された唐代の公私文書を分析した。円仁は遣唐使の一員として唐代の中国に渡り、10年間の求法巡礼を行った。その時、記録した日記が『入唐求法巡礼行記』である。ここには、円仁の求法巡礼に関わる公私の文書が53件記載されており、これを分析することによって、彼の旅行内容や唐朝における生活を、文書行政の観点から明らかにした。以下がその成果である。
①文書53件の内訳は、状式文書が24件、牒式文書が16件、帖式文書が7件、勅式文書が1件、その他、疏や覆問書、答書と書かれている文書が5件ある。唐代のすべての行政は文書によって成り立っていた。円仁は唐朝の官人ではないが、長い滞在の中で官府との接触や交渉の機会が多くあり、そのため『行記』には状、牒、帖などの公文書、官文書が多く残された。
②円仁文書の発給時期に関して、時間的には三つの時期に分けられる。第一は円仁の入唐初期、揚州に到着し、台州天台山への求法を希望した時期。第二は、帰国の遣唐使船を下り、登州文登県の赤山法花院に滞在した時期。そして第三は円仁が長安に滞在した時期である。円仁はこれらの時期に、より多くの官庁や官員、寺院や僧侶と接触、交流し、交渉を行った。これが文書の発給、残存数に影響した。
③円仁文書には、①で述べた公文書以外に、私的な内容の文書や書状も残されている。寺院に対する施舎や官僚の賜物に対する感謝、あいさつなど、より身近な日常生活や仏教交流に関する文書である。円仁の目的の一つである経典や曼荼羅の収集、書写に関して、そのための交渉や謝礼に文書が使われた。巡礼に係る旅費の工面も重要な活動の一つで、円仁は多くの官僚や官府から賜与を受けている。これも文書によってなされている。
以上が、前年度の研究で明らかになった成果である。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、前年度は円仁『入唐求法巡礼行記』の文書分析を行うことになっており、その文書の基本的概要がすべて明らかになったことから、本年度の研究は順調に進んだと言える。新型コロナウイルスの感染拡大で、資料調査や学会発表など出張による成果公表はできなかったが、基本的な文献調査は確実にできたことから、概ね順調に進展していると評価できる。
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| 今後の研究の推進方策 |
本年度は、前年度に調査、読解した円仁文書について、より体系的に考察し、論文や学会発表などで成果を公表したい。併せて、円仁の次に唐代の中国に渡った円珍の『行歴抄』を調査して、その中に記載されている公私文書を読解、分析する。以上の研究計画に大きな変更はない。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
当該年度（2020年度）は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、海外はもとより国内の出張がほぼ不可能になり、当初、予定していた資料調査や海外発表などをすべて取りやめにせざるを得なくなった。その結果、旅費の部分に計上していた金額に余剰が生じ、翌年度分に繰り越すこととなった。
2021年度は、後半期に国内調査と海外出張を予定し、前年度に実施できなかった資料調査や学会発表を行うこととしている。新型コロナウイルス感染の収束が見通せず、出張が再び不可能になる可能性が高い場合には、本研究に関連する史料や文献の購入経費に充当することを検討する。
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